2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610015
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
湯浅 邦弘 大阪大学, 文学研究科, 教授 (30182661)
|
Keywords | 兵学思想 / 兵法 / 異文化 / 李衛公問対 / 気 |
Research Abstract |
本年度は、関係資料の分析とそのとりまとめを行いつつ、特に、昨年度から継続して行ってきた、敦煌石室出土の『占雲気書』残巻の検討を進め、終了した。また、これまで、詳細な校注のなかった『李衛公問対』について、特に、蕃漢問題(夷狄と中華との関係を兵学上どのように見るかという問題)を論じている巻上を取り上げ、校注を作成した。兵学思想史研究上、具体的に明らかとなった主な点は次の通りである。 1.敦煌石室出土の『占雲気書』に記された占辞に注目すると、それらは実に多様な観点によって構成されており、これらが実戦体験の蓄積の上に成立したものであることを予想させる。 2.『占雲気書』と類似する『晋書』天文志等の記載も、従来は、雲気図がなかったため、それらが本来どのような意味を持っていたのかについては判然としなかった。この結果、占辞のみを対照してほぼ同様とするのが通説であった。しかし、雲気図を含めて両者を対照してみれば、本来セットになっていた雲気図と占辞が、後に、雲気図を欠落させつつ、史書の天文志等に記載されていったのではないかと推測される。 3.『占雲気書』の占辞の思想的特質は、五行説(五行相生・相剋)の反映という点である。『占雲気書』には、五行説を背景として占辞が記述されていると思われる場合がある。それは、『晋書』天文志等の他書にも部分的には見られる現象ではあったが、他事の場合、要素を欠落させたり、色彩の配合が逆転したりして、五行の原理が該当しない場合もあった。この点に関しては、『占雲気書』は他書よりも強く五行説を反映していると考えられる。
|
Research Products
(1 results)