Research Abstract |
本研究では,現代の子どもの睡眠習慣に焦点を当て,睡眠短縮,就床時刻の後退(夜更かし)が心身の健康状態にどのような影響を与えているかを検討することを目的として実施されている.研究計画に沿って,本年度には,従来から実施されてきた実験研究に加え,中学生を対象としたフィールド研究と高校生を対象とした実験研究を追加するとともに,既に収集されている調査研究のデータの分析を行った. 実験研究1 3名の児童・生徒を対象に縦断的に実施されている.1名につき3日間の測定日を設け,最初の2日は基準日,3日目は2時間睡眠を短縮する実験日であった.基準日の一方は,授業期間と同様の就床・起床時刻を設定し,他は授業期間よりも1〜1.5時間睡眠時間を延長した.測定された指標は,入眠潜時(1日5回測定),舌下温であった.入眠潜時は,基準日と比較して睡眠が短縮されると午前(10:00)及び夕方(18:00)で極端に短くなった.また,体温リズムの頂点位相は年齢に伴って後退し,7-8歳で位相が確立されるとした過去の知見とは異なっていた. 実験研究2 睡眠の短縮及び延長が日中の眠気に及ぼす影響を検討するために,女子高校生7名を対象に,実験研究1と同様の手続で実験が実施された.この研究は継続中であるが,睡眠延長によって日中の眠気は明らかに改善された フィールド研究 前年度からの継続で中学生を対象に,日常生活の中で1週間,小型活動計(ActiTrac)による活動量,体温,眠気と集中力,心身の健康状態の測定を行った.データ収集が完了したばかりなので,分析は次年度の予定であるが,健康状態に基づいて2群に分け比較していく予定である. 調査データの分析 日中の眠気として居眠りや昼寝を取り上げ,これらの頻度によって睡眠時間や健康状態を比較したところ,頻度の高い者ほど睡眠時間は短く,健康状態は悪くなっていた. 最終年度においては,これまでに得られた研究データ(実験研究,フィールド研究,調査研究)の分析をしていくと同時に,ある小学校の保健委員会が「睡眠習慣と健康」というテーマで年間活動を実施するため,そのアドバイザー兼サポート役として調査等の実施・処理に関わる予定である.
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