2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610138
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
市井 雅哉 琉球大学, 教育学部, 助教授 (10267445)
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Keywords | EMOR / PTSD / 性被害 / 虐待 / 記憶 / 外耳道温 / 心拍数 / IES-R |
Research Abstract |
性被害を受けた複雑性PTSDが疑われる2名のクライエントに対して、EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)を用いた治療を行い、治療中の左右の外耳道温、心拍数を継続測定した。 IES-R得点45前後のA子(21歳)は、幼少期から母親から暴力的なしつけがなされ、兄から性虐待を受けた生育歴を持ち、慢性的な疲労感、窒息感、他人の接触に対して驚愕反応、性行為で過呼吸発作、性行為の相手と性虐待者がダブる、霊を感じる、精神が不安定、解離性障害(DDNOS)の診断基準も満たした。EMDR30回で性虐待、婦人科受診、母親の暴力、父親の冷たい対応、別れたボーイフレンドとの性行為などの記憶の再処理を行い、これを含めた47回の治療により、症状は大きく改善し、IES-Rは20台の後半、BDIは一桁となった。EMDR施行前後のさまざまな指標を検討した結果、(1)右の温度が左より高い(.25〜.39℃)、(2)左右とも施行前から後にかけて上昇する(左:.17℃、右:.32℃)、(3)セッションの進行につれ終了時の左の温度が高い傾向がある、(4)認知の妥当性が左右の外耳道温度や心拍数と関連があることがわかった。 一方、IES-R得点43のB子(35歳)は、阪神・淡路大震災後の不調として、子どもとの分離不安、頭痛、不眠等の症状を訴えた。治療への恐怖感が強く、17セッション目にようやく3回の性被害(19歳時に義父からと知人から各1回、30歳時に1回)が語られた。これらの記憶や義父の実母への暴力の記憶などをEMDR11セッションで治療したが、希望で中断となったセッションが多く、IES-R、BDIともに改善が見られないまま、39セッションで治療中断となった。EMDR施行前後のさまざまな指標は、(1)右の外耳道温が左よりO.25℃高かった。(2)心拍数は施行前から後にかけて、3拍低下し、(3)成功したセッションでは心拍数が低かった(前:10.58;後:12.25の差)。
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Research Products
(1 results)