Research Abstract |
本年度は,食物に対する態度(食態度)と食習慣・食嗜好との関係性を調べ,さらに心理的健康の程度を測定し,食態度,食習慣,心理的健康の間に何らかの因果的関係が存在するかどうかについて分析,検討することを目的とした.105名の大学生を対象に,食態度,食習慣,心理的健康さらに食行動質問用紙を施行し,データを分析したところ,因果的関係を示唆する結果を得た.共分散構造分析をおこなったところ(GFI=0.887,AGFI=0.828),快志向的態度(3項目,r=0.418,t=2.014,p<.05)および外発的摂食傾向(3項目,r=0.430,t=3.03,p<.01)は情動的摂食傾向に因果的関係をもち,情動的摂食傾向(3項目,r=0.283,t=2.29,p<.05)は,心理的健康(3項目,r=0.418,t=2.014,p<.05)に因果的関係をもつことが判明した.本分析において心理的健康を構成する3項目とは,「手足やからだがだるく感じます」というものであり,THI(東大式健康調査用紙)における「不定愁訴」項目に対応する項目であった.また簡便性を優先する摂食態度,抑制的摂食傾向,塩味嗜好の傾向の3因子については,心理的健康との直接的因果関係はみられなかった.これらの結果は,当初想定していたものとは大きく異なる.簡便性を優先する摂食態度が塩味嗜好および心理的健康と直接的関係をもたず,むしろ快志向的態度が関係するということは興味深いものであるといえよう.しかし,情動的摂食傾向が心理的健康とつよく関連するものであるということを示しているとも解釈ができる.現段階での分析は,データ数も限られており,これ以上のことは不明である.今後,より多数のデータを収集し,より詳細な分析を行っていく必要がある.次年度においては,これらの諸点について,さらなる検討を加えていく.なお,本年度における研究成果は,2001年度の日本心理学会大会において発表予定である.
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