2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610307
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
笠原 政治 横浜国立大学, 教育人間科学部, 教授 (70130747)
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Keywords | 森丑之助(もり・うしのすけ) / 文化人類学 / 先駆者 / 台湾先住民族 / 台湾研究 / 『台湾蕃族図譜』 / 『台湾蕃族志第一巻』 |
Research Abstract |
森丑之助は1890年代の後半以降,20年間近く台湾山地先住民族の実地調査を行った日本における文化人類学の先駆者であるが,その著作には,単行本として出版された『台湾蕃族図譜』(1915年,写真集・2巻),『台湾蕃族志第1巻』(1917年,タイヤル編)のほかに,学術雑誌・台湾総督府関係の雑誌などに発表された論文や資料報告,さらには新聞記事,未発表の手書き報告書などのあることが確認されている。それらの著作はすでに大半を収集し,入力作業を進めている段階である。 森の修学時代については,1892(明治25)〜1893(明治26)年に在籍した長崎商業学校(現長崎市立長崎商業高等学校の前身で,「長崎外国語学校」を統合した)の関係者籍から,当時の中国語学習の実情を窺うことができる。また,19世紀末から20世紀初頭にかけての台湾と「内地」の交通,通信,人の移動などに関して,沖縄の図書館等に所蔵されている文書から判明することも多い。森の生涯と研究活動には謎に包まれた部分が大きいが,背景となるその時代の資料を発堀することによって,ある程度まで欠落部分を補っていくことは可能であろう。 現在,台湾では,台湾先住民族研究の先駆者として森の存在が注目され始めており,著作の中国語訳,手譜や調査路線図の作成など,その研究活動を明らかにするための試みが現れてきている。そうした地元における関心の高まりにも応じながら,森という人物を通して,日本文化人類学の黎明期に光を当てることは,研究史の上で重要な意義を持つと考えられる。
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Research Products
(1 results)