2002 Fiscal Year Annual Research Report
近世北奥地域の馬産・獣害・大豆生産にみる人間と自然の関係史
Project/Area Number |
12610342
|
Research Institution | Miyagi Gakuin Women's University |
Principal Investigator |
菊池 勇夫 宮城学院女子大学, 学芸学部, 教授 (20186191)
|
Keywords | 馬産 / 狼狩り / 猪飢饉 / 獣害 / 大豆生産 / 焼畑 / マタギ / 安藤昌益 |
Research Abstract |
2002年度は本課題の最終年度にあたったので、二年間の個別研究を踏まえて、北奥地域、とりわけ八戸藩領を中心に、馬・狼・猪・焼畑・大豆生産およびその他の要素を含めた生態系・環境について相互連関的な考察をすすめ、報告書を作成した。また、そのために必要な史料・文献の収集を補充的におこなった。報告書には、(1)「北奥地域における『猪飢饅(イノシシケカチ)』の環境史的考察」、(2)「安藤昌益の思想と飢饉体験」、(3)「損毛高と幕藩関係-盛岡藩を事例に-」、(4)「稗田と赤米の歴史」の四本の論文を収録した。(1)は本研究の骨格をなす論文である。寛延2年(1749)の八戸藩の飢饉は「猪飢饉」と呼ばれているように、1740年代同藩では猪荒れの被害が多発していた。なぜ、猪が異常繁殖したのか、その因果関係を考えると、地域の主要な産業であった大豆生産と馬産の2つが大きくからんでいた。大豆は商品作物として、17世紀末から江戸市場向けに生産・移出されるようになり、焼畑を含む山野の開発が進み、猪に襲われやすい耕作環境になった。馬産の大きな障害は馬が狼に襲われることであり、そのためマタギ(鉄炮猟師)を動員するなどして、狼狩りが実施され、猪の天敵である狼が減少した。このような2つの要因を八戸藩日記など当時の史料を利用して具体的な様相を明らかにした。(2)は(1)を書くなかで派生した論文である。安藤昌益は八戸城下に居住し、猪飢饉や宝暦の飢饉を体験していたことが知られており、昌益の思想形成と飢饉・風土的環境との関わりについて論じた。他の2本は関連研究というべきもので、(3)は凶作被害の程度を示す損毛高の算出根拠について、(4)は北奥の自然条件のもとでの田稗・赤米について、それぞれ考察した。報告書外にも、本課題に関連する飢鐘関係の論文をいくつか作成し公表した。
|
Research Products
(2 results)