2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610365
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
安田 二郎 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授 (90036666)
|
Keywords | 中国 / 唐 / 史学史 / 李延寿 / 南史 / 姚思廉 / 梁書 |
Research Abstract |
660年ごろ成立の李延寿私撰の通史『南史』と、636年完成の勅撰の断代史=姚思廉『梁書』との叙述内容の相違点につき、清朝以来の諸先学の成果、特に榎本あゆち氏の労作をふまえて、李延寿の同書撰述の動機、即ちその同時代史的な関心を究明すべく、多角的な検討を試みた。成果の一端を記すと、以下のごとくである。 1.李延寿が『南史』撰述に着手したのは、姚『梁書』の完成後のことであることからも、『梁書』に著しい「書美諱悪」の「曲筆」批判。是正することを、直接契機としていたことが推断できる。 2.『南史』最大の特徴は、梁朝の皇族・宗室の不当行為を詳述活写することにあるが、これには、亡国梁に対する姚思廉の私的な恩義意識に基づく「諱悪の曲筆」を批判・是正する意図に加えて、唐太宗期前半期政治史を画する「封建制」論議の強い影響を看取できる。 3.関連Lて、梁王朝滅亡の原因を、姚思廉が佞臣の専権に帰するのに対して、李延寿は、皇族・宗室の放縦を放置した君主武帝の寛治の政治姿勢に見出しているが、この理解は、何之元「梁典総論」の把握と軌を一にしている。 4.『南史』循吏伝における郭祖深の立伝と梁武帝の仏教崇信に対する批判上奏文の採録には、唐太宗の仏教優遇策に対する批判の意が託されていたものと想定される。 5.従来、『南史』撰述の動機と背景については、父李大師の遺志、及び、隋唐統一帝国の出現なる時代潮流が強調されており、このこと自体には誤りはない。しかし、あわせて、姚『梁書』対する批判是正の意図なるものとともに、唐太宗の政治が具有する「光と陰」の部分を直視する李延寿当人の主体的な同時代史的な関心が、根底に存したことを見逃してはならない。
|
Research Products
(1 results)