2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610366
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小松 香織 筑波大学, 歴史・人類学系, 講師 (10272121)
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Keywords | オスマン帝国 / 海軍 / 海運 / 近代化 / 汽船 |
Research Abstract |
本研究は、オスマン帝国の近代海軍・海運の形成過程を分析することにより、経済的植民地化と民族主義の台頭が、オスマン帝国末期の社会・経済構造に及ぼした影響を考察するもので、(1)海軍の改革とお雇い外国人、(2)海運業と外国系・非ムスリム系資本、(3)ムスリム商船における非ムスリム船長・乗組員という3つのテーマを設定している。 本年度は(2)のテーマに絞って研究・調査・成果の公表を行った。これまでに収集した史料にもとづいて、2000年5月13日第16回日本中東学会において「近代オスマン海運に関する一考察-外国汽船と「カボタージュ権」問題-」と題して問題提起を行い、オスマン帝国水域のカボタージュ権をめぐる英土論争の4つの事例をとりあげ不平等条約下の海運の問題点を指摘した。 夏期には海外調査を行った。ロンドンでは国立公文書館および海洋博物館においてユーフラテス川・シャトルアラブ川の海運問題に関する史料を収集した。トルコ共和国においてはイスタンブルの総理府公文書館、市立図書館、イズミルの国民図書館で(2)に関連する史料・文献等を収集した。また、海軍博物館で次年度に予定している(1)と(3)に関する研究の予備調査を行った。 成果の公表に関しては、まず2000年10月9日に北海道大学文学部で行われた「イスラーム社会におけるムスリムと非ムスリムの政治対立と文化摩擦に関する比較研究」シンポジウムに参加し、「『マールーマート』紙の反ギュルジュ汽船報道」と題してオスマン帝国末期の社会における民族資本待望論と非ムスリム系海運業者の関係について報告を行い、後日報告書を提出した。次に、「カボタージュ権」問題について前述の学会報告を更に掘り下げ、「オスマン海運におけるカボタージュ権問題-英国汽船をめぐって-」(『歴史人類』第29号2001年3月)と「オスマン帝国のカボタージュ権問題-イズミル港湾の事例について」 (『自然・人間・文化-民族統合と地域間統合-』筑波大学大学院歴史・人類学研究科 2001年3月)の2つの論文を作成した。
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