2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610366
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小松 香織 筑波大学, 歴史・人類学系, 講師 (10272121)
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Keywords | オスマン帝国 / 海運 / 海軍 / 近代化 / ナショナリズム |
Research Abstract |
本研究は、オスマン帝国の近代海軍・海運の形成過程を分析することにより、経済的植民地化とナショナリズムの台頭がオスマン帝国末期の社会・経済構造に及ぼした影響を考察するものである。本年度は「エスニシティ」をキーワードに2つのテーマを設定し、史料の収集と整理・分析をおこなった。(1)オスマン海軍におけるルーム(ギリシア人)の役割について、(2)オスマン帝国末期の海軍業にみられる人事構成についてである。 具体的な研究活動としては、夏期トルコ共和国で史料の収集をおこなった。(1)に関してはトルコ共和国総理府オスマン朝文書館およびトルコ海軍博物館付属文書館において、徴兵および人事関係の史料を中心に調査した。(2)については、トルコ海運公社がオスマン帝国末期からトルコ共和国期に至るまでのオスマン海運企業に関する多くの史料を所蔵していることを確認し、さしあたり人事と給与関係の記録について、おおまかな全体像を把握することから始めた。給与台帳の分析は当時の海運企業における人的構成を明らかにする上で重要なてがかりとなると考えられ、次年度に集中的に調査することを予定している。 成果の公表に関しては、(1)のテーマについて2001年10月27日歴史人類学会第22回大会において「オスマン帝国の近代と海軍」と題する報告をおこなった。その中で、夏期に収集した史料にもとづき、オスマン海軍における非ムスリム特にルームの役割を再検討し、ギリシアの独立、タンズィマート期の徴兵制度の改革、高揚するナショナリズムとそれに対抗するイデオロギーとしての汎イスラーム主義といった問題が海軍の人的構成にどのような変化をもたらしたのかを明らかにした。
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