2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610366
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小松 香織 筑波大学, 人類学系, 助教授 (10272121)
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Keywords | オスマン帝国 / 海運 / 海軍 / 近代化 / ナショナリズム / エスニシティ |
Research Abstract |
本研究は、オスマン帝国の近代海軍・海運の形成過程を分析することにより、経済的植民地化とナショナリズムの台頭がオスマン帝国末期の社会・経済構造に及ぼした影響を考察するものである。本年度は「エスニシティ」をキーワードにいくつかのテーマを設定し、史料の収集と整理・分析をおこなった。たとえば海軍については、18世紀以後の海軍の組織的、技術的改革の動向、さらに19世紀以後のギリシアの独立運動に代表されるナショナリズム運動などが、オスマン海軍におけるムスリムと非ムスリムの役割にどのような影響をおよぼしたのか、また海運については、オスマン帝国末期の官営海運企業の人員構成にみられる黒海沿岸地方出身者の偏重の理由といった問題をとりあげた。 具体的な研究活動としては、夏期トルコ共和国で史料の収集をおこなった。海軍に関してはトルコ共和国総理府オスマン朝文書館およびトルコ海軍博物館付属文書館において、徴兵および人事関係の史料を中心に調査した。また、19世紀末に発行された『海軍公報』の希少なバックナンバーを入手した。海運については、昨年度に引き続き、トルコ海運公社が所蔵するオスマン帝国時代の人事と給与関係の記録の収集をおこなった。給与台帳の分析は当時の海運企業における人的構成を明らかにする上で重要なてがかりとなるものの、史料の性質上複写が不可能で書き写しに時間がかかるため、次年度にも集中的に調査する必要がある。 成果の公表としは、過去の研究蓄積に本研究のこれまでの成果を加えて、2002年11月に『オスマン帝国の海運と海軍』(山川出版社)を刊行した。
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