2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610387
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
服部 伸 岐阜大学, 教育学部, 助教授 (40238027)
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Keywords | ドイツ史 / 医療資格 / オルタナティブ医療 / ホメオパシー / 自然療法 / 下層医業者 / 手工業的外科医 / 無資格治療師 |
Research Abstract |
まず、基礎的な作業として、19世紀末から20世紀初頭のヨーロッパ社会がどのような社会変動を経験したのかを分析している社会史的研究文献を収集し、最近の社会史研究の研究動向をつんだ。また、研究方法について、ボッシュ財団医学史研究所の研究員から助言を受けた。 さらに、来年度以降の調査の予備作業として、医師の下位におかれた医業者の状況の変化を19世紀初頭から20世紀初頭にかけての長いタイムスパンの中で明らかにした。ヴュルテンベルクでは、19世紀前半まで存在した手工業的外科医が、19世紀初頭までは、社会的にも信頼される存在であり、国家もそれに見合う資格と認知していた。ところが、大卒医師への権限が集中されていく19世紀前半に、手工業的外科医の治療範囲が限定されるようになった。ただし、一方では、手工業的外科医のうち上位の資格を有する者には、高等教育機関での学術的な教育を求めるようになっており、一部の手工業的外科医の能力は、決して時代遅れではなかったことが伺える。しかし、上位の手工業的外科医は、19世紀後半には一般の医師と統合され、下位の手工業的外科医だけが残存したのである。結局、こうした資格の試験も、ドイツ帝国統一後には廃止された。ただし、資格保持者の診療は継続したので、ヴュルテンベルクでは、帝政期末まで、多くの手工業的外科医が開業を続けたのである。 ところで、帝政期の手工業的外科医の少なからぬ者が、オルタナティブ医療に進出していた。彼らは、治療法、処方できる治療薬などでに関して、医師と比べで不利な立場に置かれた。こうした状況の中で、新たな可能性を求めてオルタナティブ医療を試みたと考えられる。 他方、オルタナティブ医療分野で、新たな無資格下層治療師の社会的需要が高まってくるわけであるが、これに応じて、多くの無資格治療師が出現した。このような治療師の力量については、正統医学の医師から激しい批判があり、オルタナティブ医療の信頼を損ねかねなかった。また、クライアントの中からも、いかさま治療師に対する批判が現れた。こうして、自然療法民間人運動組織では、組織内部で通用する独自の治療師資格を整備するようになったのである。
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