2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610423
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Research Institution | National Research Institute Cultural Properties, Nara |
Principal Investigator |
小池 伸彦 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所, 飛鳥藤原宮跡発掘調査部, 主任研究官 (90205302)
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Keywords | 古代 / 鉛製錬 / 乾式製錬法 / 甑炉 / 産金 / 駿河国 |
Research Abstract |
平成13年度は、諸種の非鉄金属のうち特に鉛の製錬工程の検討、銅の製錬・精製・熔解炉型式の再検討、産金地等の踏査を主目的として研究を進めてきた。その結果、鉛の製錬工程の一部分について明らかにでき、銅生産では熔解炉に新たな型式を加える必要を認め、また、続日本紀駿河国産金記事について富士川上流の産金地との関連も視野に入れるべきとの考えに至った。 9世紀代の鉛の製錬工程については、長登銅山跡大切IV C区出土炉跡・金属鉛、平原第II遺跡出土炉跡・金属鉛・銅スパイスを含有する鉛などを総合的に検討した上で、大切IV C区出土の炉跡は現在でいうところの「乾式製錬法」ないし「乾式法」に類似する行程で用いられたものではないかと考える。すなわち、これらの炉跡は焼結の度合いが低く燃焼温度が低いと推定されること、付近から純度の高い金属鉛が出土していること、また、平原第II遺跡では化学分析の結果、熔離脱銅のドロスとされるものが出土していることなどを根拠とし、粗鉛から銅やその他の不純物を比較的低温で除去する「乾式製錬法」に類似する行程に火床炉型式の小型炉を用いたものと推定する。大切IV C区では、焼結度合いの比較的高い炉跡も出土しており、これは「乾式製錬」の前段階である熔鉱の段階を示すものかもしれず、注意される。 銅生産で用いられる炉については、1円形竪炉(製錬炉)、2火床炉A(製錬炉)、3火床炉B(精錬ないし精製炉)、4火床炉C(精錬・精製ないし鋳銅炉)、5石組炉(精錬炉ないし鋳銅炉)を従来考えてきたが、鋳銅炉として6甑炉形炉を新たに付け加える。これは、長登銅山跡では未発見であるが、飛鳥池遺跡に於いて7世紀後半代のものが認められ、長登銅山跡E類型炉との関連が注意されるからである。ただし、炉の全形は不明であり、組合式の甑炉でない可能性もある。
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