2001 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ文化史における女性の政治的イメージの変遷の研究
Project/Area Number |
12610505
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
庄司 宏子 大妻女子大学, 比較文化学部, 講師 (50272472)
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Keywords | アメリカ文学 / アメリカ文化 / 女性史 |
Research Abstract |
「アメリカ文化史における女性の政治的イメージの変遷」の研究の第二年目である今年度は、19世紀末と20世紀初頭の二つの時代の母性像を探ることを主眼とした。前者の19世紀末においては当時の流行の文学ジャンルであったユートピア小説、とくにフェミニスト・ユートピア小説に表れた母性像に注目し、後者の20世紀初頭においてはウイリアム・フォークナーの小説『死の床に横たわりて』に描かれた母性像に注目して、それぞれの母性像が同時代のいかなる政治的・社会的言説と結びついて構築されたものであるかを考察した。 前者では、19世紀末において理想郷としてのユートピアの原理となった優生学思想が当時の国家的航路探検の中で起こった北極ブームと結びつくさまが浮かび上がり、母性イメージの研究のみならず文化史研究としても興味深い知見が得られた。また後者では、優生学の台頭の中で登場してくる社会改革運動(社会浄化運動、環境衛生運動、全米母親会議など)の中で描かれた理想的母親像(当時は「科学的母性」と呼ばれた)の反転像としての母性をフォークナーの小説の中に検証した。この成果をそれぞれ論文にまとめた。 今後は18世紀末の建国初期のアメリカで思い描かれた理想的母性(「建国の母」と呼ばれている)を当時の小説、新聞、雑誌等から探り、この母性と同時代の「感性」(sentiments, sensibillty)の文化とがイデオロギー的に結びついていく過程に焦点を当てる予定である。
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