2000 Fiscal Year Annual Research Report
二十世紀アメリカ舞台芸術の理論と実践における文化ポリティクスの諸相と固有の問題
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12610518
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Research Institution | Toyoko Gakuen Women's College |
Principal Investigator |
戸谷 陽子 東横学園女子短期大学, その他部角等, 助教授 (30261093)
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Keywords | NEA(国家芸術基金) / NYSCA(ニューヨーク州芸術カウンシル) / 文化ポリティクス / 表象文化論 / リージョナルシアター / 前衛演劇 |
Research Abstract |
本年度は、主要なテーマとして掲げた(1.「舞台芸術と公共性の概念に見られるポリティクスの変化:国家芸術基金を中心に」2.資本主義社会における前衛舞台芸術の市場化:国際演劇祭と前衛芸術のマーケタビリティ)」3.コンピュータ時代の演劇システム地図の変化:新たな国境往来が身体のポリティクスとコミュニケーションに及ぼす影響」)のうち、1を中心に進めることととし、芸術活動と公的基金の関係を、そこに見られる双方のポリティクスを意識しつつ検証した。さらに、歴史的・社会的視点を加えるため、アメリカにおける公共のまたは非営利の芸術援助という概念自体の成立に関する資料収集を開始した。この過程で、1920年代の連邦シアタープロジェクトがアメリカにおける、非商業的な演劇システムの形成、国家芸術という概念の成立と大きく関わっており、現在のNEA(国家芸術基金)により、これらが強化される経過を確認。また、特に1990年の「わいせつな芸術」家に対する基金交付の取り消しと訴訟事件以降の、NEAの制度、システムの改革が芸術家に与えた影響を検証し、最近の基金交付のシステムの変化が、アーティストが個人として活動することを困難にしている状況も確認された。この分析をもとに、実際に渡米し、ニュージャージーパフォーミングアーツセンター、アーツインターナショナル、ドーリス・デューク・ファウンデーション、マブ・マインズなどの団体に主に財政上の活動面状況を聞く現地調査を行い、一方、基金獲得のポリティクスにたけるといわれる芸術家の活動にも目を向け、基金獲得と芸術的視点の関わりを、ポリティクスの観点から検証する作業を進め、渡米の際には、マッカーサー賞受賞者リー・ブルーアーにインタヴューを行った。アメリカの舞台芸術環境を、助成側・被助成側双方から検証し、また歴史的・社会的視点を加える作業を進め、さらに国際的演劇市場の問題にも立ち入って、複雑化した文化・芸術と財政・政治の関係を追求してゆきたい。
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