2000 Fiscal Year Annual Research Report
民法理論の構造と展開に関する実証的研究-「パラダイム転換」論の意義・役割・限界
Project/Area Number |
12620040
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
池田 清治 北海道大学, 大学院・法学研究科, 助教授 (20212772)
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Keywords | 民法 / 債権譲渡 / 譲渡禁止特約 / 差押 / 意図せざる結果 / 譲渡禁止特約 |
Research Abstract |
民法学における法理論の構造と展開をいわゆるパラダイム論と関連づけながら理解しようとする本研究は、本年度、当初の予定通り、2つの方向から検討を進め、成果を得た。 その第1は、理論の構造と発展という現象を理論的・学際的観点から検討するものであり、ここからは次の2つの知見を得た。すなわち、(1)クーンのいわゆるパラダイム転換論からは、理論発展の過程を、ある理論による他の理論の説得過程と見るのではなく、特定の理論の支持者が死に絶える淘汰の過程と見る見方を―実例を伴う実証的な形で―学んだ。(2)次にそのような理論発展の一般理論が法理論に対して持つ可能性を考えるには、そもそも法律学における理論がどのような構造を有しているのかを予め検討しておく必要に迫られ、この点に関する考察を進めたが、そのさい、幸運にも、同じく科学哲学上の議論から示唆を得ることができた。それはクーンのパラダイム転換論を合理主義的に再構成しようとするシュテークミュラーの科学理論であり、彼の見解によれば、科学理論にあっても、理論とは一般言明のみならず、実例・模範例を内包せざるを得ないものと位置づけられており、この「理論」理解が典型例からの類推という作業に重きを置く法律学上の解釈作業と酷似していることから、法律学の「理論」たる法理も同様の構造を有しているのではないかとの示唆を得た。 第2の方向は、第1の理論的・学際的方向と並行しながら、実際の法理論の発展状況を個別具体的な法理に則して実証的に検討するもので、この点については、「債権譲渡と差押の関係」と民法学上の著名で古典的な問題に対して検討を加えた。なぜなら、この問題は一方で古典的問題でありながら、他方で近時新展開の見られるものなので、法理論の構造と展開を吟味するに好個の素材だったからである。そして、その具体的成果は、池田清治「民法学における『意図せざる結果』」民事研修517号12-25頁として公表した。
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Research Products
(1 results)