2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12620095
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
藤原 千春 (竹中 千春) 明治学院大学, 国際学部, 教授 (40126115)
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Keywords | ガンディー / インド / ナショナリズム / 国民国家 / 歴史叙述 |
Research Abstract |
本研究の課題は、「マハートマ(大いなる魂)」と呼ばれたインドの国民的指導者ガンディーを、20世紀のナショナリズム運動・思想と関連づけ、政治的・歴史的に分析することである。第一の焦点は、カリスマ的人物ガンディーが民衆政治の世界でどのように歴史的に「創造」されたのかであり、第二の焦点は、ナショナリストのエリート政治の世界で聖者姿のガンディーが必要とされたのはなぜか、である。第三に、この民衆政治とエリート政治の合体した構築物としての国民国家を捉え直すことである。「ガンディー-民衆の神、国民の父」はこうした問題設定を示した。 民衆政治という学問的フロンティアに、フィールド調査・資料調査・方法論という3つの側面から取り組んでいる。平成12年度は、国内での資料調査と研究を踏まえ、意欲的なフィールド調査を行った。現地での資料調査とともに、デリーと北インド地域での調査では、現代の都市と農村の住民の意識調査によって、民衆にとっての国家やナショナリズムの意味を調査した。その一つの成果として「暴動の政治過程-1992-93年ボンベイ暴動」をまとめ、都市のスラム社会での民衆的なナショナリズムの政治を論じている。 最近の社会的激動の中でインドは厳しい政治的緊張を抱え、まさに「今」を捉え直す上で歴史的なガンディー論や独立史が政治論争の的となっている。多くの不毛な議論を越えるために、ガンディー自身と彼の思想であった非暴力主義や市民不服従を、ジェンダーの視角から分析する作業に関わるのが、「世界政治をジェンダー化する」「女性と民主主義」「ジェンダー研究から見た南アジア」の3点である。いずれにおいても、インドにおける非暴力主義的な女性の改革運動とその思想を題材に、歴史的・政治的に民族や宗教をめぐる暴力的紛争を克服する可能性を探り、新しいガンディー像を描き出そうと試みた。
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[Publications] 竹中千春: "ガンディー-民衆の神、国民の父"国際学研究. 19. 1-18 (2000)
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[Publications] 竹中千春: "民存共存の条件第2章「暴動の政治過程-1992-93年ホンベイ暴動」"日本比較政治学会(編)早稲田大学出版会. 30 (2001)
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[Publications] 竹中千春: "市民政治のフロンティア「女性と民主主義」"高畠通敏(編)世織書房. 25 (2001)
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[Publications] 竹中千春: "第1巻『理論と方法-南アジア研究の位置付け』第9章「ジュンダー研究から見た南アジア」"長崎暢子(編)叢書『現代南アジア』(全6巻)(東大出版会). 20 (2001)
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[Publications] 竹中千春: "『ブローバル,ポリティクス』10章「世界政治をジュンダー化する」"小林誠,遠藤誠治(編)(有信堂). 19 (2000)