2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12640105
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稲葉 寿 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 助教授 (80282531)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梯 正之 広島大学, 医学部, 教授 (80177344)
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Keywords | 人口モデル / 伝染病モデル / 微分方程式 / シャガス病 / エイズ / 定常解 / 分岐 |
Research Abstract |
中南米における深刻な風土病として知られるシャガス病に関する人口レベルにおける流行モデルを定式化して、その数学的性質を解析した。感染経路としては、媒介昆虫による感染と輸血による水平感染を考慮した。特に潜伏期間が長大であり、感染性の変動を考慮に照れるために感染持続時間をパラメータとして導入した構造化モデルを構成し、モデルの数学的適切性を示すとともに、定常解の存在と分岐構造を検討した。その結果、非自明なエンデミック定常解は基本再生産数が1以下であっても存在するような後退分岐がおきることがわかった。これは感染者の死亡率上昇によるホスト人口サイズの変動に対して、感染力が単調には変化しないことが主要な要因として考えられる。このことの疫学的な意義を重要である。通常の前進分岐をおこす感染症においては、基本再生産数が1を超えるとエンデミックな定常解が出現するが、感染者の割合(有病率)は、基本再生産数が1を超える程度に比例していると考えられる。また基本再生産数が1以下であれば、エンデミックな定常解は存在せず、流行は根絶される。ところが、後退分岐の場合は、たとえ基本再生産数が1以下であっても有病率が非常に大きいエンデミックな定常状態があり得ることになり、根絶の条件もずっと厳しいものになる。さらに分岐定常解の安定性について検討し、後退分岐をおこした定常解が安定となるためのいくつかの条件を示した。 また年齢構造と感染持続時間に依存するエイズ流行モデルを定式化したうえで、その定常解の分岐について調べた。この場合は水平感染のみによって定常解の後退分岐が起こることが示された。リヤプノフ・シュミットの分岐理論にもとづいて、後退分岐がおきるための必要十分条件を導いた。今後は、分岐解の安定性解析が課題となる。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] H.Inaba: "Kermack and McKendrick revisited: The variable susceptibility model for infectious diseases"Japan Journal of Industrial and Applied Mathematics. 18・2. 273-292 (2001)
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[Publications] 稲葉 寿: "人口と伝染病の数理"応用数理. 12・3. 70-83 (2002)
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[Publications] H.Inaba: "Endemic threshold and stability in an evolutionary epidemic model"Mathematical Approaches for Emerging and Reemerging Infectious Diseases, IMA Volumes Math. Appl.. 126. 337-359 (2002)
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[Publications] H.Inaba: "Semigroup approach to a pair formation model in human demography"数理解析研究所講究録. 1264. 27-41 (2002)
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[Publications] H.Inaba: "Nonlinear dynamics of open marine population with space-limited recruitment: The case of mortality control"Journal of Mathematical Analysis and Applications. 275. 537-556 (2002)
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[Publications] H.Inaba: "Backward bifurcation in a model for vector transmitted disease"Proceedings of International Conference on Morphogenesis and Pattern Formation in Biological Systems. (to appear). (2003)
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[Publications] 稲葉寿: "数理人口学"東京大学出版会. 412 (2002)