2000 Fiscal Year Annual Research Report
QCDの有効模型に基づく核子のスピン構造関数の研究
Project/Area Number |
12640267
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
若松 正志 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (40135653)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
窪田 高弘 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (80161678)
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Keywords | 核子のスピン構造関数 / 核子スピンの謎 / 量子色力学の有効模型 / ガイラル対称性 / カイラル・ソリトン / 深部非弾性散乱 / "海"-クォーク分布 |
Research Abstract |
本研究の主な目的は、核子のスピンを担うものは何かという疑問にできるだけ完全に答えることである。このプロジェクトの第一段階として、カイラル・クォーク・ソリトン模型の枠組みで、核子中のクォーク・反クオークのスピン分布および軌道角運動量分布関数を計算した。これらの分布関数は0と1の間の値をとるいわゆるBjorken変数xの関数であり、分布関数を0から1まで積分したものは対応する分布関数の第1モーメントと呼ばれる。計算で得られたスピン分布および軌道角運動量分布関数の第1モーメントから、核子のスピンの約35%程がクォークの内部スピンに由来し、残りの65%程は、クォーク・反クォークの軌道角運動量に起因することが確かめられた。更に分布の形を詳しく調べることによって、核子の軌道角運動量の30%近くを運ぶ量子力学的反クォーク励起の重要な役割が明らかになった。 核子のスピン・コンテントは観測を行うエネルギー・スケールに依存する量であり、理論の予言を高エネルギー領域で行われる観測と結びつけるためにはこのスケール依存性を理解することが不可欠である。QCDの最低次の繰り込み群方程式を解いてこのスケール依存性を調べた結果、次のようなことがわかった。現段階での私達の取り扱いでは低エネルギー・スケールではグルオンの偏極はないと仮定しているが、クォークとの相互作用の結果、グルオンはエネルギーと共に急速に正の偏極を獲得する。しかしグルオンのこの正の偏極は、これもエネルギーと共にその絶対値が急速に増大するグルオンの負の軌道角運動量によってかなりの程度相殺される。この相殺は完全ではなく、グルオン偏極の増大が勝るので、これとエネルギー・スケールには依らずに成り立つ核子の全スピン和則の結果、クォーク・反クォークの軌道角運動量はエネルギーと共に緩やかに減少する。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 若松正志: "Chiral Symmetry and the Nucleon Spin Structure Functions"Proceedings of "the XIV International Seminar on High Energy Physics Problems", eds.A.M.Baldin et al.. 15-22 (2000)
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[Publications] 若松正志: "Do We expect Light Flavor Sea-Quark Asymmetry also for the Spin-Dependent Distribution Functions of the Nucleon?"Physical Review D. 62巻,1号. 017506 1-4 (2000)
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[Publications] 若松正志: "Spin and Orbital Angular Momentum Distribution Functions of the Nucleon"Physical Review D. 62巻,5号. 054009 1-7 (2000)
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[Publications] 若松正志: "Polarized Structure Function g2(x) in the Chiral Quark Soliton Model"Physics Letters B. 487巻,8号. 118-124 (2000)
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[Publications] 若松正志: "Solving the Nucleon Spin Puzzle based on the Chiral Quark Soliton Model"AIP Conference Proceedings of "the 14th International Spin Physics Symposium". (印刷中). (2001)
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[Publications] 窪田高弘: "RR Charges of D2-Branes in Group Manifold and Hanany-Witten Effect"Journal of High Energy Physics. 12巻. 30 1-12 (2000)
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[Publications] 窪田高弘: "相対性理論"裳華房. 198 (2001)