2001 Fiscal Year Annual Research Report
QCDの有効模型に基づく核子のスピン構造関数の研究
Project/Area Number |
12640267
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
若松 正志 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (40135653)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
窪田 高弘 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (80161678)
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Keywords | 核子のスピン構造関数 / 核子スピンの謎 / 量子色力学の有効模型 / カイラル対称性 / カイラル・ソリトン / 深部非弾性散乱 / "海"-クォーク分布 / ストレンジ・クォーク |
Research Abstract |
本研究が主要な目標としている核子のスピン構造の完全な理解のためには、問題を様々な角度から分析することが有効と思われる。進行方向と垂直に偏極した核子中のスピン依存のクォーク分布は通常transversity分布と呼ばれ、核子のスピン構造に関して、EMCグループが測定して「核子スピン・クライシス」を引き起こした縦偏極クォーク分布とは独立で相補的な情報を与えるものと信じられている。カイラリティが奇の変換性を持つこの分布は通常の包括深部非弾性散乱によっては測定不可能な量である。しかし、準包括深部非弾性散乱で生成されるπ中間子の散乱平面に対する方位角非対称性を利用してこの量を測定できる可能性がCollinsによって指摘された。このことを初めて確認したと信じられているのが最近のHERMESグループの実験である。この過程の散乱断面積はまだあまり精度良くわかっていない破砕関数(これはクォークからπ中間子が生成される確率分布をあたえる量である)に依存するため、現段階であまり断定的なことはいえないが、私達のカイラル・クォーク・ソリトン模型の予言は、HERMESグループの実験結果を概ね再現することが示された。HERMESグループの実験は標的核子を入射電子ビームと平行に偏極させて行なったものであるが、平行ではなくむしろ垂直に偏極させた実験の方が、transversity分布を決めるという目的のためにはより不定性を少なくすることができる。また私達の模型に基づく計算によれば、π^+よりもπ^-の生成断面積の方が、核子中の反クォークtransversity分布に敏感であることがわかった。 これと並行して、模型をフレーバーSU(3)に拡張することによって核子中のストレンジ・クォークとその反クォーク分布の非対称性を調べた。ストレンジ・クォークと非ストレンジ・クォークの質量差に起因するSU(3)対称性の破れの効果を無視したこれまでの計算で得られた定性的に面白い結論としては、ストレンジ・クォークとその反クォークの分布の非対称性は、非偏極分布よりも縦偏極分布の方がかなり大きいことである。現在これらの予言をもう少し定量的にするために、SU(3)対称性の破れの効果を取り入れた計算を実行中である。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 若松正志: "Solving the Nuclear Spin Puzzle based on the Chirol Quark Soliton Model"AIP Conference Proceedings of "14th International Spin Physics symposium". 570巻. 482-486 (2001)
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[Publications] 若松正志: "Chirol-Odd Distribution Functions in the Chirol Quark Soliton Model"Physics Letters B. 509巻, 1-2. 59-68 (2001)
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[Publications] 若松正志: "Nucleon Spin Structure Functions in the Chirol Quark Soliton Model"Proceedings of RIKEN BNL Research Center Workshop "Quarks, Hadrons and Nzclei". 35巻. 163-205 (2001)
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[Publications] 若松正志: "Quark-antiquark asymmetry of the nucleon strange sea"Proceedings of The 3rd Circum-Pan-Pacific Symposium on"High Energy Spin Physics". (印刷中).
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[Publications] 窪田高弘: "Gluing Conditions for Maximally Symmetric D-Branes in Gauged WZW Models"Nuclear Physics B. (印刷中).