2001 Fiscal Year Annual Research Report
分子性結晶におけるX線回折を用いた圧力誘起構造相転移の研究
Project/Area Number |
12640307
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山浦 淳一 東京大学, 物性研究所, 助手 (80292762)
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Keywords | 分子性導体 / 高圧X線回折 / 一次元電子系 |
Research Abstract |
研究の目的は、主に分子性導体をターゲットに、圧力下でのX線回折の手法を用いて、高圧下での結晶構造の情報を得るための装置開発と測定、解析手法を確立することである。この目的を、実現するために、初年度は、技術的熟練を要しない粉末X線回折用ダイヤモンドアンビルセルの設計製作を行い、簡便に使用できる圧力セルを完成させた。2年目に当たる今年度は、以下に述べるような圧力下で興味ある物性を示す物質について実験を行った。 純一次元電子系を有する分子性導体Me_4X(CPDT、TCNQ)_2(X=N, RAs)は、非常に純粋な一次元系でありながら135K(X=N)、165K(X=P)、185K(X=As)まで金属的伝導を示し、カチオンの違いによって基底状態が異なった絶縁化を起こす物質である。この物質は、室温での加圧に対しても絶縁化が観測される。今回、ダイヤモンドアンビルセルで圧力下X線回折実験を行った結果、Me_4N塩、Me_4P塩では2k_FCDW(電荷密度波)、Me_4As塩では4k_FCDWを起源とする絶縁化であることが判明した。さらにMe_4As塩において、絶縁化する圧力より高圧側で、4k_Fから2k_FCDWへ、と変化する特異な相転移が存在することを新たにに見出した。 次に、HOMOとLUMO両方の電子軌道が伝導物性に寄与する2バンド系βEt_2Me_2P[Pd(dmit)_2]_2アニオンラジカル塩に対しての実験を行った。この物質は、圧力下において半導体-金属(超伝導)-非金属と複雑に基底状態が変化する。詳細な圧力下X線回折実験を行った結果、この複雑な圧力下の変化は、HOMOバンド内でのバンド幅の広がりと、フェルミ面の一次元化で説明できることが判明した。これは、以前から提案されていたHOMOとLUMO間の重なりが圧力下の相転移に重要であるという解釈とは異なり、今回新たに得られた知見である。 上記以外の無機物を含む様々な物質についても実験を行い、興味ある結果が得られつつあることも報告しておく。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] J.Yamaura, et al.: "Cation effect on structural and physical properties of purely one-dimensional electronic system [D](CODT-TCNQ)_2[D=Cation]"Synth. Metals. 11. 913-914 (2001)
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[Publications] J.Yamaura, et al.: "High pressure X-ray study on CPDT-TCNQ anion radical salts"Synth. Metals. (in press). (2002)
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[Publications] J.Yamaura et al.: "High pressure X-ray study of Pd(dmit)_2 system"Mol. Cryst. Liq. Cryst.. (in press). (2002)
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[Publications] J.Yamaura et al.: "Low temperature X-ray study of A_<0.33>V_2O_5"J. Phys. Chem. Solid. (in press). (2002)