2000 Fiscal Year Annual Research Report
幾何学的フラストレート系の磁気構造とNMR・中性子回折
Project/Area Number |
12640345
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 裕之 京都大学, 工学研究科, 助手 (00202218)
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Keywords | フラストレーション / NMR / 中性子散乱 / 磁気構造 / ヘリ磁性 / スピン液体 |
Research Abstract |
幾何学的フラストレート系の磁気構造に関する研究でしばしば見られるNMRと中性子回折の不一致を問題点として積極的に取り上げ、NMRおよび中性子回折の実験結果の解釈に正当な根拠を与えることを目的として、いくつかの幾何学的フラストレート系化合物の実験および解釈を行った。(1)ラーベス相YMn_2の磁気構造:YMn_2は長周期のヘリカル磁気秩序を持つことが古くから知られているが、NMRの結果が文献により異なり、その解釈が混乱していた。我々は、その原因が緩和時間の周波数依存性を無視していたことにあることを明らかにし、これまでの全ての実験結果を矛盾なく解釈した。また、関連物質に対するNMRと中性子回折の結果を相補的に用いて、2軸ヘリカル構造の可能性を議論した。これらの結果は、これまで蓄積された結果とともに総括し、複数の論文として公表した。(2)三角格子ペロブスカイトBaVS_3:BaVS_3に対して低温でNMR実験を行うと、(ゼロ磁場で)低周波域にのみ信号が観測される。我々は、当初、中性子磁気散乱が観測されないことを根拠として、スピンー重項基底状態を提唱したが、その後の中性子回折実験により、基底状態で静的長距離磁気秩序があることを示した。しかしながら、今度は、中性子回折結果から示唆されるモデルでNMR共鳴周波数(内部磁場)を説明するのが困難である、という問題に直面しており、その問題を解消するため、関連物質の研究、および、より高度な実験に備えた単結晶の育成を行った。関連物質の研究から、BaVS_3では価数が比較的不安定でサイト分裂(電荷秩序)の可能性も検討する必要があることが示唆された。(3)層状化合物V_5S_8、V_5Se_8の磁気構造:これらの物質もBaVS_3と同様な問題を抱えている。これらの物質ではVの結晶学的サイトが複数存在するという点がNMR信号のサイト同定の曖昧さの原因になっているため、一方のVサイトを別元素で置き換えた系の実験を進めている。
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[Publications] Saurav Giri: "^<55>Mn NMR and NQR study of the cubic Laves-phase compound UMn_2"Phys.Rev.B. 61. 12233-12240 (2000)
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[Publications] Masayuki Shiga: "Magnetism of geometrically grustrated metallic compounds"J.Phys.Soc.Japan Suppl.A. 69. 147-155 (2000)
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[Publications] Hiroyuki Nakamura: "Incommensurate magnetic ordering and spin-liquid-like state in a triangular lattice BaVS_3"J.Phys.Soc.Japan. 69. 2763-2766 (2000)
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[Publications] Hiroyuki Nakamura: "Helimagnetic structure of YMn_2 observed by means of nuclear magnetic resonance and neutron diffraction"J.Phys. : Condens.Matter. 13. 475-500 (2001)
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[Publications] Hiroyuki Nakamura: "NMR and neutron scattering of the frustrated metallic compound YMn_2"to appear in J.Alloys Compounds. (2001)
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[Publications] Hiroyuki Nakamura: "Magnetism of geometrically frustrated transition-metal sulfides : BaVS_3 and related compounds"to appear in Phys.Metals Metallography. (2001)