2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12640363
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山崎 展樹 理化学研究所, 磁性研究室, 研究員 (00271528)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 良和 理化学研究所, 磁性研究室, 先任研究員 (90250109)
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Keywords | 絶縁体人工格子 / 弗化鉄 / 磁性競合系 / 2次元磁性体 / エピタキシャル成長 |
Research Abstract |
人工的な2次元磁性体あるいは磁気異方性・相互作用の競合する人工格子の実現を目指して、弗化物反強磁性体FeF2層と弗化物非磁性体ZnF2層からなる人工格子(多層膜)を分子ビームエピタキシー(MBE)装置を利用して作製した。弗化物層の結晶方向は下地基板に依存し、サファイア(1010)及び酸化マグネシウム(100)単結晶基板を用いることによりルチル型構造の(001)及び(110)面が各々エピタキシャル成長可能であることをX線構造解析によって確認した。鉄イオンに局在するスピンはc軸を磁化容易方向とする為、各々の基板上に作製したFeF2層はイジングスピン系及びXYスピン系と見なすことができると予想し、磁化容易方向が予想通りであることを磁化測定によって明らかにした。X線回折、反射高エネルギー電子回折(RHEED)、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて行った構造解析によって人工格子に構造上の不完全さ(各弗化物層の原子層数分布、結晶のモザイク性と不十分な構造的コヒーレンス長)が存在することも判明し、この不完全さを解消するための最適な作製条件(基板温度、弗化物層成長速度等)を求めた。構造上の不完全さは完全には取り除かれていないものの、X線回折パターンの理論計算との対比によって各弗化物層の厚さ、格子定数、界面ストレス等を定量的に評価し、ほぼ設計通りの人工格子が実現していることを確認した。FeF2層の反強磁性転移温度(ネール温度)は膜厚の関数として変化し、3次元磁性体から2次元磁性体への遷移(次元クロスオーバー)が起っていると結論した。1原子層から2原子層の間で転移温度が有意に低下する現象は、FeF2本来の磁気的相互作用の競合が低次元化の為に顕著になり、特定のサイトのスピンがフラストレーションを起す為であると解釈した。今年度得られた研究成果に関しては論文にまとめ、既に投稿済みである。
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