2001 Fiscal Year Annual Research Report
全球凍結現象における物理化学過程と地球環境システムの挙動に関する理論的研究
Project/Area Number |
12640419
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田近 英一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (70251410)
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Keywords | 全球凍結 / スノーボール・アース / 地球システム / 炭素循環 / 原生代 |
Research Abstract |
原生代には3度の大氷河時代が知られており,そのすべてに低緯度氷床が存在した証拠(すなわち,地球全体がほぼ完全に凍結するスノーボール・アース現象が生じた証拠)がある.原生代には,スノーボール・アース現象を引き起こしやすい要因が存在したに違いない.この問題について,気候モデルと炭素循環モデルを用いて理論的に検討を行った. 原生代にスノーボール・アース現象が生じた原因としてまず第一に考えられるのは,太陽放射の違いである.原生代は太陽放射が現在の80-95%程度しかなかったことが知られている.そこで,このような境界条件のもとで,原生代において全球凍結条件が達成されやすくなるかどうかについて,南北1次元エネルギーバランスモデルと炭素循環モデルを用いて検討した.その結果,原生代の弱い太陽放射の影響は,当時の地表面に陸上高等植物が存在していなかったことによる低い風化強度の影響によって完全にうち消されてしまうことが分かった.すなわち,スノーボール・アース現象の要因として,太陽放射の強さは本質的には関係ないと結論される. 地質学的研究によれば,原生代後期には海水の炭素同位体比が大きく変動していたことが分かっている.そこで次に,炭素循環モデルに炭素同位体比の時系列データを与えて,炭素循環システムの変動を調べた.すると,氷河期直前には海洋における生物生産性が非常に高まること,逆に氷河期直後には生物生産性が非常に低下することが分かった.氷河期直前の生物生産性の増加は,大気二酸化炭素の固定率の増加を意味するため,スノーボール・アース現象の直接的原因であった可能性が高い. ただし,生物生産性の増加だけでは全球凍結に必要な二酸化炭素レベルの低下は引き起こせず,他に何らかの要因が必要であることも分かった.それについては,今後の課題として引き続き検討中である.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Eiichi Tajika: "Proterozoic Snowball Earth : Effect of faint young Sun on the climate of the Earth"Proceedings of ISAS Lunar and Planetary Science Symposium. 34. 45-48 (2001)
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[Publications] 田近英一: "スノーボール・アース現象"日本惑星科学会誌. 11(印刷中). (2002)