2002 Fiscal Year Annual Research Report
火山性堆積物地域の埋没林の年輪年代学的解析による生態・環境情報の復元
Project/Area Number |
12640450
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
木村 勝彦 福島大学, 教育学部, 助教授 (70292448)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長橋 良隆 福島大学, 教育学部, 助教授 (10292450)
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Keywords | 年輪年代学 / 火山 / クロノロジー / 古環境 |
Research Abstract |
生態学では、現在の自然群集内での個々の生物種の生態的特性をもとに、個々の種の持つ形質の適応的意義が解釈され、将来の温暖化等の環境変動による生物群集の変遷の予測などがなされている。一方で、花粉分析などの古生物学的な研究は、現存する生物と種レベルではほぼ同一の種群からなる最終氷期以降においても、気候変動だけからは説明できない現在とは著しく異なった森林群集が存在していたことを示してるが、当時の生物種の具体的な生態特性などはほとんど明らかになっていない。本研究は、主に火山性堆積物に覆われた埋没林の年輪解析により、現在のものとの比較の上で過去の森林群集、構成種の生態特性を明らかにすることを目的とした。 調査は、北海道から山口県にいたる11ヶ所の最終氷期から18世紀までの範囲の埋没林を対象に実施した。その中で、注目すべき結果として、約5000年前の青森市大矢沢の十和田中セリ火山灰層下の埋没林のブナと、ほぼ同時期の福島県の沼沢火砕流内の炭化ブナにおいて、極めて高いsensitivityを持った年輪幅変動が認められた。このような年輪変動は、東北地方6県の200個体のブナを調べた限りでは現在のブナには認められず、当時のブナが現在よりもより強い結実の豊凶変動を持っていたことを示唆している。並行して実施したブナの豊凶と年輪幅変動の関係に関する研究では、大豊作年に年輪幅の大幅な落ち込みが認められたが、埋没ブナ材のものそれをはるかに越える大きな落ち込みであった。これは、後氷期の分布拡大期にブナの繁殖に対する投資が増大していた可能性を示唆しており興味深い。また、青森市の十和田八戸火砕流下の氷期の針葉樹埋没林では、現在の亜高山帯の森林に多くみられる被圧稚樹型の初期成長が全くみられず、ほとんどの個体が極めて高い初期成長を持ち、当時の更新動態がPicea属やLarix属の優占する組成と対応関係を持つことなどが明らかになった。
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