2000 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯域において植物から大気中に放出される極性有機化合物の分布と変動に関する研究
Project/Area Number |
12640481
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
横内 陽子 国立環境研究所, 化学環境部, 主任研究官 (20125230)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥田 敏統 国立環境研究所, 地球環境研究グループ, 総合研究官 (20214059)
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Keywords | 有機化合物 / 大気 / 植物 / アルデヒド / アルコール / 測定 |
Research Abstract |
熱帯域における大気中植物起源VOC(揮発性有機化合物)の動態を調べるために、本年度は、測定法の検討と熱帯植物放出ガス成分に関する予備測定を行った。 大気サンプリング方法として、(1)ステンレス容器を用いたグラブサンプリング、(2)Carboxene 1000/Carbopak Bを用いた常温吸着捕集、(3)Carbopak B/Carbopak Cを用いた常温吸着捕集について検討を行った。(2)で用いたCa rboxene1000は吸着力が大きく、塩化メチルのような極低沸点成分まで定量的に捕集できるが、Carbopak BやCarbopak Cに比べて水分に対する保持率が高い。このため、脱水剤と組み合わせて使用する必要があり、高沸点成分や極性成分のサンプリングには不適であった。(1)のグラブサンプリングでは、全成分が捕集されるものの、特に極性の強い酢酸などは容器内壁へ吸着するため、測定時の定量的回収が困難であることが分った。一方、(3)の場合には、Carbopak B/Carbopak Cが水をほとんど保持しないため、脱水剤は不要となり、また、極性成分も容易に加熱回収されたが、一部の低沸点成分については100%捕集できない。そのため、全成分を対象とした大気サンプリングには、(1)あるいは(2)と(3)を組み合わせて用いることとした。 熱帯植物が実際に放出している極性VOCを調べるために、代表的な熱帯植物が多数生育する温室(国立博物館・筑波実験植物園の熱帯雨林温室内、容積:約8100m3)内外の大気組成を比較した。サンプリングには(1)と(3)を用いて、それぞれ低温濃縮-キャピラリーGC/MS法によって測定した。その結果、温室内ではイソプレンが特に高濃度であるが、極性VOCについてはノナナール、デカナールなどの飽和アルデヒド類、アセトン、アセトアルデヒド、エタノール、酢酸などが外気に比べて数倍〜数十倍と高濃度であり、熱帯植物がこれらの極性VOCを大量に放出していることが分った。また、個別植物の葉を採取して、バイアル瓶内に置き、清浄窒素を通気してその放出ガスを濃縮後、分析した結果、温室内で観測された極性VOCに加えて、2.butanone,2-butanol,1-penten-3-ol,2-pentanone,3-pentanone,2-ethyl furan,hexanal、3-hexenal,2-hexenal,4-hexenol,3-hexenol,1-hexanol,3-hexenyl acetate,2-ethyl hexanolなどのアルコールやオレフィンのアルデヒドが大量に検出された。これらの化合物が温室内の大気中ではそれほど高濃度でなかったので、袋をかぶせるなどのストレスを受けたときにのみ放出されることが一因として考えられる。来年度以降は実際の熱帯・亜熱帯森林内における極性VOCの分布と変動を調べ、その大気化学的意義を解析する。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] T.Saitoh,Y.Yokouchi,K.Kawamura: "Distributions of C2-C6 hydrocarbons over the western North Pacific and eastern Indian Ocean"Atmospheric Environment. 34. 4274-4281 (2000)
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[Publications] H.-J.Li,Y.Yokouchi,H.Akimoto,Y.Narita: "Distribution of Methyl Chloride, Methyl Bromide, and Methyl Iodide over the Ocean"Geochemical Journal. (印刷中). (2001)
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[Publications] H.Satsumabayashi,H.Nishizawa,Y.Yokouchi: "Pinonaldehyde and some other organics in rain and snow in central Japan"Chemosphere. (印刷中). (2001)