2000 Fiscal Year Annual Research Report
芳香族高分子における電荷キャリア発生初期過程の可視・近赤外フェムト秒分光
Project/Area Number |
12640497
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮坂 博 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教授 (40182000)
|
Keywords | 電子移動 / ホール移動 / フェムト秒分光 / ピコ秒分光 / 有機光電導体 |
Research Abstract |
側鎖に芳香族基を持つ高分子系(芳香族ビニルポリマー)には、芳香族基カチオンを電荷担体とした光電導性を固体状態で示すものが多い。巨視的なスケールでの光電導現象は、キャリア発生(電荷分離)とキャリア輸送(電荷シフト反応)に大別される。この2つの過程には、数個以上の芳香族基にカチオンが非局在化したカチオン状態が、重要な役割を果たしていることが強く示唆されている。この非局在カチオン状態の生成に対して、本年度は、以下のように研究を行なった。 高分子系のカチオンの電子スペクトルは、モノマーカチオンと比較して、隣接基との相互作用に由来するブロードな形状を示す。このブロードな吸収はピコ秒レーザーの分解能以内に現れることから、カチオン状態は、本質的に大きな分子運動を必要とせずに、ある程度非局在化した状態をとると考えられる。またこのような状態の生成が、従来考えられてきたキャリア発生に対応するとも考えられる。この電荷シフト反応の始状態である電荷分離直後のカチオンの非局在化程度を、以下のように検討した。まず、基底状態で弱い電荷移動(CT)錯体を形成する電子受容体を加え、CT吸収帯の選択励起により時間原点で電荷分離を行わせ、フェムト秒レーザー分光装置により測定した。一般的に基底状態のCT吸収スペクトルは、モノマー系と大きくは異ならないので、生成直後のカチオンのスペクトルは、モノマーカチオンのものに類似していると期待できる。従って、スペクトルをモニターすることで、モノマーに局在化したカチオンあるいは、少なくとも2つ以上に非局在化したカチオンの区別が可能である。今回の実験の結果、150fsのパルス幅を持つレーザーでは、カチオンのスペクトルの時間変化は観測されなかった。すなわち、非常に高速(数10fs以内)に、カチオン状態の非局在化が進行することが判明した。より直接的かつ詳細に検討するために、二色性の測定システム、また近赤外部の測定システムを作成している。このことによって、芳香族基間に非局在したカチオンの示す近赤外部の電荷共鳴(Charge Resonance:CR)帯の直接観測を、平成14年度は行う。
|
Research Products
(4 results)
-
[Publications] N.Tamai: "Ultrafact Dynamics of Photochromic Systems"chemical Reviews. 100・5. 1875-1890 (2000)
-
[Publications] H.Miyasaka: "Multiphoton Gated Photochromic Reaction ma Diarylethene Derivatives"Journal of American chemical Society. 123・4. 753-754 (2001)
-
[Publications] H.Miyasaka: "Formation of Extremely Long-Lived Charge-Separated state by two-photon ionization in poly(N-vinylcarbazole)"Chemical Physics Letters. 335・2. 496-502 (2001)
-
[Publications] 宮坂博: "季刊化学総説「超高速化学タイナミックス」(分担出筆)"学会出版センター. 263(189-197) (2000)