2000 Fiscal Year Annual Research Report
混合溶媒中のイオンの選択溶媒和に関する構造化学的解明と選択性の定量的表現
Project/Area Number |
12640546
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
大瀧 仁志 立命館大学, 理工学部, 教授 (80022549)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂上 成美 立命館大学, 理工学部, 助手 (10272139)
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Keywords | 選択溶媒和指数 / 選択溶媒和 / 混合溶媒 / 溶媒和エネルギー / 溶媒和イオン / 溶液X線回折法 |
Research Abstract |
2種の溶媒が混合している媒体中に電解質を溶解させると、生成したそれぞれの陽イオンや陰イオンは2種の溶媒により溶媒和される。これらのイオンに溶媒和している溶媒の組成は、一般にイオンによって異なるし、またバルクの溶媒組成とも異なる。溶媒和圏の溶媒組成がバルクの組成と異なる時、イオンはある一方の溶媒と好んで結合しようとする性質があることを示し、このとき、イオンは一方の溶媒により選択的に溶媒和されているという。多くのイオンが混合溶媒中でバルクの溶媒組成と異なる溶媒和組成をもつことは、さまざまな混合溶媒中の電解質の挙動に関する研究、たとえば混合溶媒中のイオンの移動度、溶媒和熱の測定などの研究から古くから推測されたはいたが、溶媒和圏内の溶媒組成を直接決定する手段が開発されていなかったため、単なる定性的推論にとどまっていた。われわれは溶液X線回折法により第1溶媒和圏の溶媒組成を直接決定することに成功した。この結果、選択溶媒和の程度を定量的に表現する量として、A-B混合溶媒において、あるイオンの溶媒和圏における溶媒AおよびBの濃度(モル分率x^^-_Aおよびx^^-_B=1-x^^-_A)とバルク層における溶媒AおよびBの濃度(モル分率x_Aおよびx_B=1-x_A)の値より、選択溶媒和指数K_<PSQ>=[x_A(1-x^^-_A)]/[x_A(1-x_A)]を新たに導入した。熱力学的考察から、-RTIn K_<PSQ>は当該イオンの溶媒AおよびBの溶媒和ギブズエネルギーの差ΔΔG^0_<solv>と密接に関連していることが示された。溶媒分子が嵩高い場合には、溶媒和圏内の狭い空間では溶媒分子同士が接近するため、立体障害を起こすことがある。このような場合には、K_<PSQ>の値はΔΔ(G^0_<solv>から予想される値とは異なってくる。このことから、溶媒和圏内における溶媒分子間の立体障害によって生ずる余分なエネルギーのおおよその値を見積もることができる。このような考察はこれまでおこなわれたことはなく、溶液中のイオンの挙動に関する微視的な、全く新しい知見である。
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Research Products
(11 results)
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[Publications] H.Ohtaki,N.Katayama,K.Ozutsumi,Y.Radnai: "The Structure of Liquid Formamide Studied by Means of X-Ray Diffraction and NMR at High Temperatures and High Pressures"J.Mol.Liquids. 88. 109-120 (2000)
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[Publications] N.Sakagami-Yoshida,M.Teramoto,A.Hioki,A.Fuyuhiro,S.Kaizaki: "Anomalous Stereochemistry of Pyrazole-3,5-dicarboxylato-Bridged Dinuclear Chromate(III) Complexes."Inorg.Chem.. 39. 5717-5724 (2000)
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[Publications] 大瀧仁志: "溶液中のイオンの形と色"化学と教育. 48,6号. 356-359 (2000)
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[Publications] Tamas Radnai: "Celebration of Inorganic Lives. Interview with Hitoshi Ohtaki"Coord.Chem.Rev.. 1-13 (2000)
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[Publications] 大瀧仁志: "ア〜福岡は今日も雨だった。一天が水を運んできた第26回溶液化学国際会議"学術の動向. No.2,46-50 (2000)
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[Publications] 大瀧仁志: "世界-リッチな王様のいる国、ブルネイ王国"学術の動向. No.11,35 (2000)
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[Publications] 大瀧仁志: "『理学教育の振興』と『研連の再編成』を推進"学術の動向. No.12,42-45 (2000)
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[Publications] 大瀧仁志: "台北の街は意外に落ち着いていた-第10回アジア化学会連合総会と第8回アジア化学会議に出席して-"化学と工業. 53,300-303 (2000)
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[Publications] 大瀧仁志: "IUPAC分析だより。I.Bureauについて"ぶんせき. No.1,45-46 (2000)
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[Publications] 大瀧仁志: "書評大学院錯体化学"化学. 55,No.6,56-57 (2000)
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[Publications] 大瀧仁志: "書評 武井武と独創の群像生誕百年・フェライト発明七十年の光芒"電気化学. 68,735 (2000)