2000 Fiscal Year Annual Research Report
新しい電子供与体、ヘキサチアトリナフチレン類の革新的合成法とその高次組織化
Project/Area Number |
12640547
|
Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
末永 勇作 近畿大学, 理工学部・化学科, 講師 (70278745)
|
Keywords | 銀錯体 / テトラチアアントラセン / テトラチアアントラ-p-ヒドロキノン / オクタチアビフェニル / 結晶構造 |
Research Abstract |
本研究は、新しい電子供与体であるヘキサチアトリナフチレン類の新規合成法を確立し、これを配位子に遷移金属化合物を使って多次元に集積させた化合物を合成、その性質を明らかにすることである。ヘキサチアトリナフチレン類は平面構造ではなく、1、4-ジチイン骨格で100〜143°ベントすることから興味深い立体構造を取り得る。今年度の成果は次の通りである。 1.チアントレン骨格を有する新規な有機配位子の合成 フッ素置換芳香族化合物を出発原料に1、4-ジチイン環を有する様々な有機配位子を合成した。たとえば、ジベンゾ-1、4、5、8-テトラチアアントラセン(bta)、ジベンゾ-1、4、5、8-テトラチアアントラ-p-ヒドロキノン(bthq)、テトラベンゾ-2、2'、3、3'、5、5'、6、6'-オクタチアビフェニル(btb)、テトラ(1、4-ジチアナフト)[a,c,f,h]ナフタレン(tdnn)などの化合物で、収率もそれぞれ、62%、90%、70%、56%と高収率で得られることを確認した。化合物はIR,NMR,Mass,元素分析によって同定した。 2.有機配位子の構造と性質 単結晶X線構造解析によってbtaは1、4-ジチイン環部分で125°、また、bthqは131〜136°屈曲し、分子全体として椅子型構造をとっていることがわかった。単結晶のパッキング構造から、分子間の相互作用は認められなかった。 3.Ag(I)錯体の合成と性質 硫黄原子と配位結合を形成しやすい、Ag(I)を金属化合物に選び、錯体合成を行った。Ag-tdnn錯体では対アニオンを選択することで、PF_6^-では加水分解によってPF_2O_2^-が生成し、金属:tdnn=4:1の組成比を持つ錯体ポリマーが、CF_3SO_3^-では金属:tdnn=2:1の組成比を持つ二核錯体が合成できたのではないかと推定している。得られた錯体の室温における電気伝導度を二端子法によって測定したところ、前者では半導体領域の伝導性を示すのに対して、後者の錯体では絶縁体であった。このことから、ポリマー構造を形成した結果、分子間相互作用が働き、伝導経路が確保できたものと考えている。 4.今後の予定 種々のチアントレン骨格を有する有機配位子を合成できたので、ラジカルカチオン塩を合成し、その構造と性質を明らかにしていきたい。
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] Yusaku Suenaga: "Three-Dimensional Silver (I) Co-ordination Polymer with Pocket Structures"J.Chem Soc., Dalton Transactions. 3620-3623 (2000)
-
[Publications] Yusaktu Suenaga: "Structural Control of Silver (I) Co-ordination Polymers : Construction of Two-and Three-Dimensional Frameworks of Silver (I) ions Bridged by Dicyanopyrazine"Inorg.Chim.Acta. 308. 17-21 (2000)