2000 Fiscal Year Annual Research Report
寒冷な貧栄養地に生育する常緑広葉樹の生活様式に関する研究
Project/Area Number |
12640609
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
山村 靖夫 茨城大学, 理学部, 助教授 (50202388)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 隆志 山梨県環境科学研究所, 研究員
堀 良通 茨城大学, 理学部, 教授 (30125801)
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Keywords | 常緑広葉樹 / 貧栄養立地 / 栄養塩経済 / 窒素動態 / 物質生産 / 光合成速度 / 水ストレス / 葉群動態 |
Research Abstract |
低温環境と貧栄養環境に対する常緑広葉樹の適応的性質を明らかにするために,溶岩地のアカマツ林内に生育する常緑広葉樹の環境,葉群動態,物質生産,栄養塩経済を解析し,以下のような結果を得た。 1.野外での年間を通した環境及び葉群動態の調査を,亜高木層で最も優占している常緑広葉樹であるソヨゴについて行った。ソヨゴの樹冠上の相対光量子密度は,夏には全天の10〜20%であり,秋から冬にかけてはそれより低下した。葉の寿命は,比較的明るい樹冠では2〜3年,暗い樹冠では4〜5年であった。 2.ソヨゴの光合成活性の季節変化の測定においては,土壌が凍結し厳しい低温にさらされる1月と2月を除く10ヶ月に渡って光合成が可能であることが示された。また,8月の晴天時に,常緑広葉樹のソヨゴとアセビ,落葉広葉樹のミズナラの3種について,光合成,蒸散,水ポテンシャルの日変化を測定したところ,ソヨゴとアセビはミズナラに比べて最大光合成速度,最大の気孔コンダクタンスの値は低かったが,水ストレスを受けにくく著しい日中低下を起こさなかった。このため一日の純生産量は,常緑広葉樹と落葉広葉樹の間で差はなかった。光合成可能期間の長さを考慮すると,年間の生産量は常緑広葉樹の方が大きいことが示唆された。 3.葉面積当たりの葉重量の季節変化から,新葉の展開時に旧葉から物質が転流することが予想された。そこで葉と枝の窒素量の季節変化を調べ,4年枝までの茎葉内での窒素動態を解析したところ,当年枝に供給される窒素のほぼ全てが旧茎葉から供給されていることが分かった。落葉の際の窒素の回収率は約60%であった。以上のことから,ソヨゴの葉はきわめて重要な窒素のプールとなっており,貧栄養条件下での効率的な窒素経済に役立っていることが示唆された。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Uemura,A.,Ishida,A.,Nakano,Y.,Terashima,I.,Tanabe,H.,Matsumoto,M.: "Acolimation of lauf characteristics of Fagus species to previous-year and current-year solar irradiance"Tree Physiology. 14. 945-951 (2000)
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[Publications] Ishida,A.,Sakikano,S.,Maruta,E.,Masuzawa,T.: "Diurnal changes in needle gas exchange in alpine Pinus pumila during snow-melting and summer seasons"Eological Research. 16. 107-116 (2001)