Research Abstract |
前年度に引き続き,数種のクジラ類に対し,吸盤装着型データロガーの装着を試みた.調査は以下の4回に渡って行われた. 平成13年6月7-14日調査地:和歌山県熊野灘沖.対象種:マッコウクジラ 平成13年7月23-30日調査地:和歌山県熊野灘沖,対象種:マッコウクジラ 平成13年8月19-25日調査地:鹿児島県長島海峡,対象種:ミナミハンドウイルカ 平成13年9月10-17日調査地:北海道室蘭沖,対象種:コビレゴンドウ 平成13年10月10-20日調査地;小笠原諸島父島沖,対象種:マッコウクジラ 和歌山県沖の熊野灘における調査では,今年度はマッコウクジラの発見がほとんど無く,装着にいたることができなかった.鹿児島県長島海峡のミナミハンドウイルカについては,群れ本体が調査直前に,長島海峡から通詞島沖に移動したため,残った小群を対象に行ったが,警戒心が強く装着することができなかった.また,室蘭沖では天候不順により,十分な調査ができず,コビレゴンドウの発見もなかった. 小笠原父島沖では,定住性のマッコウクジラ群の3頭についてロガーの装着を成功させ,各13, 17, 14時間の潜水データを回収した.これらマッコウクジラの潜水行動は,大まかには昨年熊野灘で得たデータと似ており,最大1300mに至る40-45分の潜水を10分弱の浮上を挟んで繰り返していた.潜水の底部では,頻繁な深度の変化,速度の変化が見られ,これらの大潜水が,採餌を目的としたものであること,活発な探査による採餌を行っていることが明らかとなった.一方,小笠原海域では,長時間浮上している部分が長く,また,潜水の底部での急激な速度の上昇の回数が少なかった.さらに,明らかに夜間の方で潜水深度が浅くなるという,熊野灘では見られなかった日周性が見られた.これらの違いは,海域による餌生物の種類及び豊度の差異によるものと考えられ,興味深い今後の検討課題である.また,熊野灘,小笠原ではいずれも深度とともに,底部での遊泳速度が増す傾向が見られ,深度により採餌する餌種類が変化し,深度が深くなるほど,大型で密度の低い餌生物を捕食している可能性が示された.
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