2000 Fiscal Year Annual Research Report
地球温暖化傾向下における地域サンゴ群集の保全に関する研究
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12640619
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
酒井 一彦 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 助教授 (50153838)
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Keywords | 造礁サンゴ / 大規模白化 / 群集回復 / 集団遺伝 / 琉球列島 / 幼生分散 / 遺伝子流 |
Research Abstract |
(1)サンゴ群集回復の追跡:1998年大規模白化後のサンゴ群集の回復過程を追跡するために、瀬底島周辺に永久方形区域を設定し、野外調査を実施した。その結果、白化以前に最も量的に多かった放卵放精型のミドリイシ属サンゴ幼生加入数の平均は、最大の地点で13m^<-2>と高く、回復の兆しが認められた。一方幼生保育型のハナヤサイサンゴ科幼生の加入は全く見られず、繁殖様式によってサンゴ個体群の回復速度が異なることが示唆された。また現存するミドリイシ属サンゴのサイズと成熟度を調査したところ、瀬底島周辺では成熟サイズに達したサンゴはほとんどなく、野外で発見された加入個体は、瀬底島周辺で生産されたのではないことが明らかとなった。 (2)サンゴ個体群の集団遺伝学的解析:琉球列島の沖縄島、慶良間諸島、および石垣島/西表島において、放卵放精型のコユビミドリイシと、幼生保育型のショウガサンゴを採集し、アロザイム分析により、地域間の遺伝子流を推定した。その結果コユビミドリイシでは、幼生の分散による遺伝子の交流が広く起こっているが、ショウガサンゴでは遺伝子流が近い地域間に限られていることが明らかとなった。また両種とも、慶良間諸島と沖縄島の遺伝的距離が近かったことから、慶良間諸島は沖縄島におけるサンゴ群集回復のための幼生供給源となることが示唆された。一方コユビミドリイシは石垣島/西表島からも沖縄島まで幼生が分散している可能性が示唆された。また室内実験で、放卵放精型サンゴと幼生保育型サンゴの幼生の浮遊期間を測定し、放卵放精型で浮遊期間がより長いことが明らかとなった。
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