2000 Fiscal Year Annual Research Report
変動環境における.プレフォーメーションの意義:北極圏のムカゴトラノオを例として
Project/Area Number |
12640621
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
西谷 里美 日本医科大学, 医学部, 講師 (50287736)
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Keywords | Polygonum viviparum / 北極圏 / プレフォーメーション / フェノロジー |
Research Abstract |
本研究は、成育可能な期間が短く、しかも年ごとの変動が激しい環境下において、プレフォーメーション(生育期よりも前に芽の中で行われる器官形成)がどの様な意義を持つのかを明らかにすることを目指している。そのために、人工気象器を用いて植物を裁培し、プレフォーメーションと生育期間の環境条件が、生長に及ぼす影響を評価する。 実施計画に従い、本年度は植物試料の採集と育成を行い、次年度以降に予定している裁培実験に備えた。採集は、ノルウェー領スバルバール諸島ニーオルスン(北緯79度・東経12度)において、雪解けの時期が異なる3地点で行なった。これは、これまでの野外調査から、雪解けの傾度に沿った、様々な生態的特性の差異が示唆されていたからである。7月下旬から約3週間の滞在期間に、成熟したムカゴを順次採集し、ネットにいれて屋外に放置した。また、次年度の採集に備え、植物への標識と、温度環境をモニターするためのデータロガーの設置を行った。ムカゴは持ち帰り、1.5C暗条件で1.5ヶ月間冷湿処理した後にシャーレに播いた。発芽の最適温度が不明であったため、5Cと12C(いずれも連続光)で発芽させた。発芽は12Cの方が良好であった。播種から3週間後に、12C(12時間)・5C(12時間)・連続光の条件に移して育成した。ほとんどの個体で発根と、1〜3枚の展葉を確認した。約2ヶ月で地上部が枯死した。これは野外での生育期間の長さにほぼ等しい。枯死後に一部の個体の頂芽を解剖し、プレフォーメーションの状態を調べた。数枚の葉原基の存在を確認できた。試料は、4月からもう一度育成し、低温処理を行った後に実験に用いる予定である。
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