2000 Fiscal Year Annual Research Report
根の重力屈性におけるオーキシンの可逆的代謝反応とカルシウムイオンの役割
Project/Area Number |
12640626
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
鈴木 隆 山形大学, 教育学部, 教授 (70134145)
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Keywords | インドール酢酸 / オーキシン / カルシウムイオン / 細胞壁 / 重力屈性 / 信号伝達系 / 根 |
Research Abstract |
根の重力屈性の発現に,根冠アポプラストにおける遊離型Ca^<+2>が何らかの役割を担っていることが報告されてから久しいが,まだ,その役割については明らかにされていない。我々は,トウモロコシの一次根を材料として,重力の信号伝達系におけるCa^<+2>の役割を解析し,根冠における遊離型Ca^<+2>は,根冠から伸長域へ重力信号を伝達する物質(成長制御物質)であるインドール酢酸(IAA)の代謝(結合型IAAから遊離型IAAへの変換)に関わっている仮説を提案した。本研究は,この仮説を検証することが目的である。今年度は,トウモロコシ一次根の根冠を含む0-1mm根端切片を用い,その細胞壁画分における結合型IAAの動向に及ぼすCa^<+2>の影響を調べた。カルシウムイオンキレート剤であるEGTA処理区と非処理区の細胞壁結合型IAAの含量は,それぞれ,1.56±0.19nm/g F.W.,0.85±0.18nm/g F.W.であった。この結果は,EGTAでアポプラストのCa^<+2>を除去すると,細胞壁中の結合型IAAが増加することを示している。また,EGTA処理後続いて10^<-6>M IAAだけで処理した切片と,10^<-6>M IAAと同時に10mM CaCl_2で処理した切片における結合型IAA含量を調べたところ,IAAだけの処理区は1.62±0.25nmol/g F.W.,IAA+CaCl_2の処理区は1.17±0.13nmol/g F.W.であった。さらに,非結合型のIAAは,IAAだけの処理区で0.79±0.07nmol/ml,IAA+CaCl_2の処理区は0.90±0.06nmol/mlであった。これら結果は,Ca^<+2>を加えると細胞壁中の結合型IAAが減少し,非結合型IAAが増加することを示している。つまり,細胞壁中の結合型IAA含量はアポプラストのCa^<+2>に依存し,Ca^<+2>は結合型IAAからIAAを解離し,可動性の非結合型(遊離型)IAAにする反応に関与していることが明らかになった。現在,結合型IAAからIAAの解離におけるCa^<+2>の機能を明らかにすべく,細胞壁標本を試料したin vitro系の実験を計画している。
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