2001 Fiscal Year Annual Research Report
被子植物の重複受精についての超微形態学的及び分子細胞学的研究
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12640646
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒岩 晴子 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (50313200)
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Keywords | 被子植物 / Pelargonium zonale / 重複受精 / アミロプラスト / 受精卵 / 巨大ミトコンドリア / 原色素体 |
Research Abstract |
本研究の目的は、被子植物の受精において、重複受精後卵細胞が第一分裂するまでの卵細胞の変動を細胞学的に捉えることである。12年度において、ゼラニウム(Pelargonium zonale)をもちいてテクノビット-DAPI法と電子顕微鏡法で、受精後の接合子の変化を詳しく観察した。13年度においては接合子内のオルガネラのうち、ミトコンドリアと色素体に注目して、その形態変化とDNA量の変動を追った。成熟した未受精卵の核の周辺部には多量のDNAを含む巨大ミトコンドリアと、多量のデンプンを含む色素体が約45個ずつ散在している。巨大ミトコンドリアはテクノビット切片の三次元構築から、厚みをもったカップ状のものが数個、お互いにつながらずに積み重なっている事が分かった。電子顕微鏡観察及び免疫電顕で、これらのミトコンドリアはチラコイドをほとんどもたず、内部いっぱいに大量のDNAを蓄積していることがわかった。受粉後3-6時間で、進入した花粉管によってもたらされた2つの精細胞と、卵及び中央細胞との受精がおきると、巨大ミトコンドリアは次第にそのカップがはずれ、やがてそれぞれのカップは変形を始め、所々にくびれが出来て次第にちぎれ、細胞の第一分裂時には直径0.5-1umの小さい球形の、数百のミトコンドリアに分散する。ミトコンドリア当たりのDNA量をカウントしたところ、ミトコンドリアの変形につれて次第に減少し、第一分裂時では当初のほぼ1/200になっていた。一方アミロプラストも受粉後約10時間でデンプンの消失が始まり、やがて分裂がおこり、第一分裂時にはほとんどチラコイドの無い多数の色素体に変換する。この様に受粉後24時間以内で、ミトコンドリアと色素体も大きく変動し胚発生に備えることが明らかになった。さらにこれらのオルガネラの細胞内における分布を調べると、接合子内ですでに局在が見られ、2細胞期の各細胞に不均等に分配されることから、胚発生における細胞分化は、接合子の時期から既に始まっていることが明確になった。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Mori, T., et al.: "Visualization of FtsZ Rings in Plastids of the Microspore in Lilium Longiflorum"Cytologia. 66 No.1. 113-115 (2001)
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[Publications] Mori, T., et al.: "Bacterial chloroplast-dividing ring"Plant Cell Physiology. 44. 555-559 (2001)
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[Publications] Kuroiwa, H., et al.: "Multiple FtsZ Rings in a Pleomorphic Chloroplast in Embryonic Cap Cells of Pelargonium zonale"Cytologia. 66,No.2. 227-233 (2001)
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[Publications] Higashiyama, T., et al.: "Pollen tube attraction by the synergid cell"Science. 293. 1480-1483 (2001)
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[Publications] Kuroiwa, H., et al.: "Chloroplast division machinery as revealed by immunofluorescence and electron microscopy"Planta. (in press).
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[Publications] Kuroiwa, H., et al.: "Pelargonium embryogenesis : Cytological investigations of organelles in the early embrogenesis from the egg to the two-celled embryo"Sexual Plant Reproduction. (in press).
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[Publications] 黒岩晴子: "朝倉植物生理学講座第4巻「成長と分化-受粉と受精」(福田裕穂編)"朝倉書店. 11 (2001)