Research Abstract |
脊椎動物の身体を支える中軸骨格である脊柱がいかに形づくられていくかは,非常に興味あるテーマである。孵化後すぐにニワトリの松果体を除去すると,脊柱形成に異常が生じ,側弯が生じる。この実験モデルは,個体全体として細胞あるいは組織同士がどのような情報交換をして,正しい形(脊柱)を作りあげるのか,脊柱形成過程を時間・空間レベルで調べることができる優れたモデルである。最近我々が見いだした肉用品種(ブロイラー)を用いる系では,松果体除去後わずか14日で100%の個体に側彎が生じる。そこで本研究では,この松果体除去ブロイラーの系を用いて,時間経過を追って脊柱変形が生じる原因を明らかにすることを目的とし実験を行った。 本年度は,松果体除去後,特に脊柱変形が生じる前までの骨代謝状態を調べた。採取した血液に関しては,Ca濃度を調べるとともに,骨吸収マーカーとしては,酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ,ハイドロキシプロリン(Hrp),I型コラーゲン・C末端テロペプチドを測定し,骨形成マーカーとしては,アルカリホスファターゼ(Alp),I型プロコラーゲン・C末端ペプチド(PICP)を測定した。さらに,採取した脊椎骨に関しては,Ca濃度を測定するとともに,骨塩量をDXAを用いて調べた。その結果,松果体除去群を対照群と比較すると,3日齢においてはAlp活性が有意に低値を示したのに対し,5日齢においては逆に有意に高値を示すとともに,Hrp濃度も有意に高値を示した。8日齢になるとAlp活性及びPICP濃度は有意に高値を示した。一方,血液中のCa濃度は有意に高値を示すとともに,脊椎骨中のCa濃度や骨密度は,曲がり始める8日齢において有意に低値を示した。これらの結果は,松果体除去により骨代謝異常が生じ,その結果として脊柱が変形した可能性を示すものである。
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