2000 Fiscal Year Annual Research Report
アブラムシ類における無性生殖集団の起源と系統関係の解明
Project/Area Number |
12640673
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
秋元 信一 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (30175161)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 英祐 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助手 (40301874)
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Keywords | アブラムシ / 系統 / DNA / 無性生殖 / 有性生殖 / 種分化 |
Research Abstract |
アブラムシ(昆虫綱:同翅目)は無性生殖によって世代を繰り返し、年に一度だけ有性生殖を行うのが典型的な生活史である。ところが、同じ種とされるアブラムシのなかでも、有性生殖を完全に失った集団がしばしば見いだされる。無性生殖集団の起源を探るため、無性生殖集団と有性生殖集団を含めた種内系統を明らかにし、無性生殖集団が繰り返し有性生殖集団中から起源したのか否かを明らかにすることを目指した。平成12年度は、Tetraneuriniに属するTetraneura,Colopha,Paracolopha属の各種について日本各地から多くのサンプルを収集するとともに、DNAの抽出とDNA配列の決定を行った。北米から得られたTetraneura(これはアジアのものと同種とされている)も解析に含めることができた。2つのDNA領域、ミトコンドリア16SリボゾーマルRNA(1600塩基)とCOII(約400塩基)の配列を決定した。総合的な結果は現在解析中だが、16SリボゾーマルDNAの結果に基づく限り、有性生殖を行うTetraenura各種は、かなり古い時代に分岐したことを示す証拠が得られた。Tetraneuraの有性生殖種は、同一の寄主上(ハルニレ)で同所的に見られ、繁殖も同じ樹皮で同じ時期に行われる。しかし、Tetraneura各種の種分化は、現在の同所性から予想されるような同所的種分化ではなく、地理的な隔離のもとで長い時間をかけて種が分化してきた可能性が示唆された。一方、寄主を他の植物に代えた集団は、必ずハルニレにきわめて近縁な集団が見つかった。このことは、寄主の乗り換えがごく最近に生じたことを示している。 系統解析と同時に、マイクロサテライト遺伝子を探索し、集団内多型の検出も試みたが、マイクロサテライトの多型を見いだすのがたいへん困難であった。次年度は、方法を改良し、再度マイクロサテライト遺伝子座の探索を継続する予定である。
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