2001 Fiscal Year Annual Research Report
繊毛虫のメイトキラー因子の解明とその因子の起源から探る同胞種群の系統進化
Project/Area Number |
12640682
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小阪 敏和 広島大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (10033903)
|
Keywords | メイトキラー / センシティブ / 繊毛虫 / ユーブロテス / シンゲン / 双体 / 種群間接合 |
Research Abstract |
下毛目繊毛虫のユープロテス(Euplotes)、特にEuplotes woodruffi種群でのメイトキラーついて種々の観点から研究と分析を行っている。繊毛虫の有性生殖の方法である接合の時に、メイトキラーは接合のパートナー(センシティブ)を殺すという特徴をもつ。メイトキラーの分布と起原を探るため、沖縄県で2回、九州地方で1回、高知県・愛媛県で1回、島根県・鳥取県で1回、和歌山県で1回、静岡県・山梨県・神奈川県で2回の採集調査を行い、多数のE. woodruffiの株を単離・培養している。沖縄県では那覇市の竜潭、読谷村残波岬付近、石川市のビオスの丘周辺、沖縄市東南植物楽園、安波川、汀間川、伊地川、我部祖河川で本種を採集することができた。これらの株とシンゲン3の株は低率ではあるが接合を行う。メイトキラーとセンシティブは形態的に区別できないので、熊本県江津湖産のメイトキラーの株から1個体が2細胞から成る双体を実験的に作り、双体と沖縄県産株を接合させて、メイトキラーかセンシティブかを決定した。非常に興味深いことに、読谷村残波岬付近、石川市のビオスの丘、沖縄市東南植物楽園から採集した株の中に、自身もメイトキラーに殺されるが、同時にメイトキラーを殺すものがいることを発見した。おそらく熊本県産のものとは別種のメイトキラーであろう。現在、詳しいことは研究中である。その他の河川から採集した株はすべてセンシティブであった。高知県四万十川・伊予木川・仁淀川、島根県宍道湖・斐伊川・三刀屋川・敬川、山梨県冨士川・本栖湖・精進湖・西湖・山中湖からも多数のE. woodruffiが採集された。これらの産地のものは、ほとんどがE. woodruffi種群のオートガミーグループとシンゲン2であるが、シンゲン3と高密度で混合した時に、低率ではあるが接合対が形成されることが新たにわかった。この種群間接合を用いて調べたところ、すべてがセンシティヴであった。なお、昨年得られた結果の一部は、日本動物学会中国四国支部大会とオーストリアで開催された国際原生生物学会で報告した。
|