2001 Fiscal Year Annual Research Report
単一種より構成されるインドストムス目(硬骨魚網)魚類の系統分類学的研究
Project/Area Number |
12640686
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Research Institution | Tokyo Medical Gakuin University |
Principal Investigator |
岩見 哲夫 東京家政学院大学, 家政学部, 助教授 (80183200)
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Keywords | 系統分類 / 染色体 / インドストムス科 / 骨格 / ヨウジウオ目 |
Research Abstract |
1染色体の解析 前年度の解析で出された染色体数・構成を確認し,本種の核型は2n=30,M/SM=14,ST/A=16,腕数44と判断された。Indostomus属魚類に近縁とされるヨウジウオ目魚類の染色体情報は決して十分とは言えないが,トゲウオ科の7種が2n=42,腕数が50〜78というデータが出されている。この数と比較してもIndostomusの染色体数はかなり少なく、44という腕数でも一致しないことからも,単純な染色体構造変化の結果ではないことが伺える。今回の研究期間では残念ながら分染等の高度な解析や近縁と考えられている魚類群の染色体データの収集まで進めることができなかったが,少なくともヨウジウオ目の代表的なグループとは一線を画する存在であると推察された。 2骨格系の解析 Indosutomus属魚類の骨格系はBanister(1970)によって詳細に記載されている。本研究ではBanisterが記述しなかった軟骨部分の形態も解析対象に加えた。その結果,肩帯の射出骨の形状,尾鰭骨格の下尾骨の癒合状況,上顎骨および下顎を形成する骨格の形状など解析から,Indostomus類はヨウジウオ目魚類としての特徴を強く示すわけではないことが明らかとなった。現時点で,ヨウジウオ目よりも近縁と思われる分類群を特定することはできなかったが,頭部筋肉系や顎の機能形態では極めて特徴的な形状も確認されており,これらの形質がどのような系統学的意味を持つか検証することで,ある程度信頼性の高い結論を導くことができるものと考える。このためにも、形態学的解析にとどまらず,分子系統学的手法を併用して,広い分類群にわたって検証を進めることが必要かつ効果的であると確信している。 3分類学的問題 Indostomus属魚類は1種のみから構成されると考えられていたが,本研究の開始時期にBritz and Kottelat(1999)によって2新種が記載された。今回,Britzらの識別形質を確認したところ,本研究で用いたのはIndostomus crocodilusと同定されたが,一部にIndostomus spinosusと思われる個体も混入していた。さらに,走査型電子顕微鏡を用いてこれら識別形質を詳細に検討したところ,必ずしもBritzらの発表したような安定したものではないことが確認され,彼らの記載には不十分な点があると判断された。少数の個体で記載を行ったため,Britzらの提唱した2種は種内変異の可能牲もあると思われたが,輸入個体の場合,正確な採集場所が不明瞭で生物地理学的解析ができないため,結論を出すことができなかった。これについても分子系統学的手法で再検証する必要があると確信している。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Masayoshi TOKITA, Saori ISHII, Tetsuo IWAMI, Jun-Ichi MIYAZAKI: "Phylogenetic analysis of Antarctic notothenioid fishes based on two-dimensional gel electrophoresis"Polar Biology. 25. 163-168 (2002)
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[Publications] Taeko MIYAZAKI, Tetsuo IWAMI, Masatake YAMAUCHI, Hiroaki SOMIYA: ""Accessory corner cones" as putative UV-sensitive photoreceptors in the retinas of seven adult nototheniid fishes"Polar Biology. 24. 628-632 (2001)
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[Publications] Tetsuo IWAMI, So KAWAGUCHI, Mikio NAGANOBU: "List of Japanese names of fishes from the Southern Ocean and its neighboring waters, with proposals of new Japanese names"Bull. Nat. Res. Inst. Far Seas Fish. 38. 29-36 (2001)