2001 Fiscal Year Annual Research Report
原子論的シミュレーションによる半導体超微細構造のひずみ緩和機構の研究
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12650074
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
新谷 一人 電気通信大学, 電気通信学部, 助教授 (00162793)
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Keywords | ナノテクノロジー / 分子動力学シミュレーション / 材料ナノ構造 / 量子ドット / エピタキシー / ひずみ緩和 / カボンナノチューブ / ポアソン比 |
Research Abstract |
1.平成12年度はS_i/S_iとG_e/S_iのエピタキシャル成長の素過程としてS_i基板上に蒸着する単一のS_i原子あるいは単一のG_e原子の挙動を調べたが、平成13年度は多数原子の堆積過程の分子動力学シミュレーションを行った。ダイヤモンド構造を精度良く表現できるポテンシャルとしてStillinger-Weberポテンシャルを採用して、分子線エピタキシー法によるS_i/_iエピタキシャル成長を想定したシミュレーションを行い、初期堆積過程における堆積層のモルフォロジーに及ぼす基板温度の影響を調べた。シミュレーションの結果から、(1)基板温度300Kでは、堆積原子はエピタキシャル構造をとらず無秩序な構造となること、(2)基板温度500Kでは、堆積原子は最初の数原子層までは無秩序な構造をとるが、その後、エピタキシャル構造へと構造変化を起こすことによってひずみが緩和されること、(3)基板温度700K、1000Kでは、堆積原子は1原子層ごとに交互に直交するダイマー列を形成しつつエピタキシャル成長し、この結果は層状成長の実験結果と対応していること、(4)堆積原子1個の挙動を調べると、その運動範囲は、300Kで表面S_i原子の最短距離より小さく、500Kで表面S_i原子の最短距離のオーダー、700K、1000Kでは表面S_i原子の最短距離をはるかに超える距離になり、この堆積原子1個の運動範囲が各温度における堆積層のモルフォロジーの違いに対応していることが明らかとなった。 2.カーボンナノチューブはグラフェンの巻き方によっては半導体の性質を示すユーークなナノ構造であるが、力学的にも極めて強くかつ柔軟であり究極のカーボンファイバーを作ることができると言われている。本研究では、この微細構造の力学的特性を分子動力学シミュレーションによって調べた。炭素原子間の相互作用力の計算にはBrennerポテンシャルを用いた。ほぼ同一の直径をもつ6種類のカイラル角のカーボンナノチューブのモデルに対してポアソン比とヤング率を求めた結果、(1)ポアソン比はひずみ依存性とカイラル角依存性を示す、(2)ヤング率はひずみ依存性もカイラル角依存性も示さない、(3)弾性域は極めて広いというカーボンナノチューブの基本的な力学的特性に関する知見を得た。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] K.Shintani: "Atomistic simulations of deposition processes of epitaxial layers"Materials Research Society Symposium Proceedings (Current Issues in Heteroepitaxial Growth-Stress Relaxation and Self Assembly). 696. N3.1.1-N3.1.6 (2002)
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[Publications] T.Narita: "Atomistic study of mechanical propertes of carbon nanotubes"Materials Research Society Symposium Proceedings (Making Functional Materials with Nanotubes). 706. Z9.7.1-Z9.7.6 (2002)
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[Publications] 大林 克至: "ねじれ接合基板上薄膜の表面モルフォロジーの解析"日本材料科学会平成13年度学術講演大会講演予稿集. 79-82 (2001)
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[Publications] 中島 隆明: "転位の相互作用の分子動力学シミュレーション"日本機械学会2001年度次大会論文集. 01-1(I). 341-342 (2001)
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[Publications] 西村 昌泰: "シリコン原子の表面マイグレーションの分子動力学シミュレーション"日本機械学会2001年度年次大会講演論文集. 01-1(I). 343-344 (2001)
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[Publications] 中島 隆明: "シリコンMBEの分子動力学シミュレーション"日本機械学会関東支部第8期総会講演会講演論文集. 020-1. 537-538 (2002)
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[Publications] 成田 隆慶: "分子動力学シミュレーションによるカーボンナノチューブの力学的特性の解析"日本機械学会関東支部第8期総会講演会講演論文集. 020-1. 539-540 (2002)