2000 Fiscal Year Annual Research Report
局在化水素分布解析とナノ損傷評価による先進金属材料の動的SCC強度特性の解明
Project/Area Number |
12650084
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
箕島 弘二 京都大学, 工学研究科, 助教授 (50174107)
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Keywords | 環境強度 / 水素ぜい化 / 昇温水素分析 / 水素状態分析 / 水素局在化分布 / き裂進展 / AFM |
Research Abstract |
先進金属系材料は極めて環境に敏感であり,材料中に水素が吸蔵されることにより水素ぜい化を生じることが問題となっている。したがって,実使用環境中における延性・じん性を改善し,実用に耐えうる材料を開発するためには,材料内部の水素の存在状態,すなわち拡散性水素と非拡散性水素量を含めた水素溶解量と環境ぜい化特性の関係を明らかにするとともに,水素が局所化している状態を把握して,それらとぜい化特性を関連づけて限界強度特性を明らかにすることが不可欠である。今年度は,TiAl系金属間化合物を対象として,昇温水素分析を用いた水素の状態分析を実施するとともに,き裂進展特性に及ぼす吸蔵水素の影響について検討した。これより,陰極電解チャージにより吸蔵水素量が増大すること,またほとんどの吸蔵水素は低温度で分解する水素化物として表面層で吸蔵されること,また,これらの水素化物は,構造あるいは水素位置が異なる複数の水素化物よりなることなどを明らかにした。さらに,陰極電解チャージ条件下ではき裂進展が乾燥空気中に比べて加速するが,この加速をもたらす水素としては,製造時に吸蔵された格子内水素に加え,陰極電解チャージにより吸蔵される水素,さらにき裂先端より吸蔵される水素がき裂進展を加速の要因として重要な役割を果たしていることを示した。さらに,動的応力下のき裂先端の変形等をナノメータで把握するために,Al合金を用いて水素チャージ条件下と非チャージ条件下において,SCCき裂先端の微視的変形挙動をAFMを用いてその場解析することにより,水素吸蔵下のほうが非吸蔵下よりもき裂先端開口変位が小さく,より鋭く尖っていることなどを,応力拡大係数を厳密に制御した条件下で明らかにした。さらに,水素マイクロプリント法を用いて水素の局在化分布を測定するために,臭化銀粒子径,定着方法等についての最適化手法の確立をはかりつつある。
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