2000 Fiscal Year Annual Research Report
超流動ヘリウムの噴水効果を利用した超伝導磁石の高性能化
Project/Area Number |
12650193
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
岡村 哲至 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 助教授 (10194391)
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Keywords | 超流動ヘリウム / 噴水効果 / λ転移 / 多孔質 / 冷却流路 / 超伝導磁石 |
Research Abstract |
超流動ヘリウム(HeII)浸漬冷却超伝導磁石では、電線間の電気絶縁と冷却流路を作ることを目的に、FRP(繊維強化プラスティック)などがコイル内にスペーサーとして挿入されている。これらの材料は熱伝導率が小さいため、冷却流路間はほぼ断熱された状態になる。ところが、スペーサーとしてFRPの代わりに多孔質材を利用すれば、超流動ヘリウム成分が多孔質材を通り抜けることができるため、流路間は熱的につながると同時に、噴水効果によりコイル内の発熱に対応してHeIIの強制流が生じ、コイル内の局所的な温度上昇を抑えることが期待できる。 そこで本研究では、FRPスペーサーの代わりに多孔質スペーサーを用いた場合の冷却性能と超伝導磁石の熱的安定性の向上について,定量的に明らかにすることを目的としている。 平成12年度では,コイルの冷却流路を模擬した試験流路素子を製作し、これを使った基礎実験によって冷却特性を調べた。試験流路素子は、大気圧下のHeII槽内に浸漬する。試験流路素子はFRP部材で構成され、2本のHeII冷却流路をスペーサーで仕切り、片方の流路にはコイルの発熱を模擬するためのヒーターが張り付けられている。本研究で用いたスペーサーは以下の3種類である。(1)従来から用いられているFRP製のもの、(2)2本の流路を熱的につなげるために、FRPに直径数mm程度の穴を多数あけたもの、(3)2本の流路を熱的につなげるとともに、HeIIの噴水効果を生じさせる平均直径数μmの多孔質性のもの。多孔質材として、アルミナ焼結体とポリカーボネイト製のものを用いた。 これらのスペーサーを用いた場合についてそれぞれ、ヒーターを加熱したときの流路内の温度分布と流路内でλ転移を起こすときの熱流束を計測した。スペーサーとしてFRPの代わりに多孔質材を用いることによって、噴水効果による流れが生じ,流路内の温度分布が平坦になり,局所的な温度上昇を抑制するとともに,λ転移熱流束が2倍程度大きくなることが明らかになった。
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