Research Abstract |
平成10年度,平成11年度科学研究費補助金(課題番号10650283)の支援を受けて,試作した電流電圧センサ内蔵がいしは,単体でリアルタイムに力率測定を可能にする画期的なセンサ方式であるが,がいしの焼結処理を伴うため,電極やサーチコイル配置位置の自由度が低く,大量生産には向くが,設計の自由度の観点から,実用的には,若干の問題点を残していた。 そこで,本年度は,電極並びにサーチコイルの配置をモジュール内で自由にとれる,樹脂一体型電圧・電流センサを提案した。このセンサでは,高絶縁性・加工性に富むポリアセタール樹脂の採用を予定し,上下に分割できる樹脂筐体内に,電極並びにサーチコイルをかなりの自由度で配置でき,上下分割構造から,停電を伴わない活線工事をならしめることを企図した。この際,がいし内蔵型センサで電流位相ずれに有効な補償効果が得られた逆位相直列接続型二連コイルを採用し,サーチコイルを用いた電流波形計測で問題となる位相ずれの克服を図った。 本年度は,本センサを横引き配電系に配置した際の電磁界シミュレーションを有限要素法に基づいて実施し,本シミュレーションの結果を考慮して理論設計を行った。その結果,分割した二個の電流センサの間に配電線を挟む格好の方式においては,良好な位相ずれ補償が得られるだけではなく,誘導起電力がコイル単体の場合の二倍になることも理論的に明らかにした。また,配電線近傍だけに一対の平板電極と半円筒電極を配置し,配電線から離れた位置に逆位相直列接続型二連コイルを配置した場合においては,電流センサ出力は若干減少するが,良好な位相ずれ補償特性は維持されることが判明した。以上の成果を踏まえて,電極,サーチコイルの配置位置について,最適な位置を理論的把握にすることができたので,既に,次年度の試作に向けて樹脂材料の選定を行い,更に,本年度の研究費を用いて,模擬配電系の構築,波形観測装置等の準備も完了した。
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