2000 Fiscal Year Annual Research Report
芳香族系添加剤による高分子フィルムの絶縁耐力の向上
Project/Area Number |
12650303
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
山野 芳昭 千葉大学, 教育学部, 教授 (90134791)
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Keywords | 絶縁破壊 / 高分子フィルム / 添加剤 / ポリエチレン / 芳香族 |
Research Abstract |
低密度ポリエチレンに以下に示す添加剤を混入したフィルムを作製して、直流絶縁破壊強度を向上させることを試みた。使用した添加剤は、芳香族系のものであり、Anthracene(As)、9,10-dibromoanthracene(Br_As)、Perylene(Pr)、Perylene-3,4,9,10-tetracarboxylicdianhydride(Tc_Pr)、Phthalocyanine(Pc)、Cu-Phthalocyanine(Cu_Pc)である。作製したフィルムの厚さは6μm〜18μmである。 測定の結果、無添加のポリエチレンフィルムの-20℃から室温における絶縁破壊強度は、厚さ10μmのもので約6MV/cmであるのに対して、Asを添加したものそれより約45%以上高い絶縁破壊強度を示した。絶縁破壊強度は(無添加)<(Pc)<(Pr)<(As)の順に高くなる。AsとBr_As、PrとTc_Prの絶縁破壊強度を比較すると、骨格となる分子に基が付加されているものの方が高い値を示す。この現象は、電子受容基が付加された添加剤を混入すると、それが電子トラップとして作用して絶縁破壊強度が上昇するという以前の我々の研究成果と一致する。また、PcとCu_Pcとの絶縁破壊強度には顕著な差がみられなかった。PCの場合、大きなπ電子環が存在するので、それがキャリア電子の運動エネルギーを吸収することにより絶縁破壊強度の向上に寄与するものと考えたが、結果としてPc,Cu_Pcともに、絶縁破壊強度の向上に顕著な効果は見られなかった。 電圧を印加してからフィルムの絶縁破壊に至るまでに電流を検出したところ、絶縁破壊強度の向上効果が大きい添加剤を含んだフィルムほど、破壊前に検出されるパルス性電流の発生数が少ない傾向にあることがわかった。このことから、添加剤による絶縁破壊電圧の向上は、破壊を誘発する電子なだれの発生を阻止する効果に基づくものと予想された。
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Research Products
(1 results)