2000 Fiscal Year Annual Research Report
スピン・エレクトロニクス創製を目指した量子超構造の第一原理計算
Project/Area Number |
12650312
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
白井 正文 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 助教授 (70221306)
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Keywords | スピン・エレクトロニクス / 第一原理計算 / 物質設計 / 閃亜鉛鉱型CrAs / ハーフ・メタリック / 強磁性体 |
Research Abstract |
電子スピンの自由度を最大限に生かした電子デバイスを創製するための指針を与えることを目的として、半導体へのスピン注入源として適当な、フェルミ準位でのスピン分極の大きな強磁性体を、電子状態の第一原理計算に基づいて探索した。一般に、希薄磁性半導体では、添加された遷移金属原子の濃度が高いほど、遷移金属スピン間にはたらく磁気相互作用が強くなることが期待される。そこで、遷移金属原子添加の高濃度の極限である閃亜鉛鉱型構造の遷移金属アルセナイドの電子状態を計算し、その強磁性と反強磁性状態における全エネルギーを比較することにより、遷移金属スピン間にはたらく磁気相互作用を調べた。 その結果、閃亜鉛鉱型VAs,CrAs,MnAsにおいて、強磁性状態が最も安定であることが明らかになった。この結果は、閃亜鉛型構造の隣接V,Cr,Mn原子間に、強磁性的な交換相互作用がはたらいていることを示唆している。特に、強磁性状態と反強磁性状態の全エネルギーの差は、閃亜鉛鉱型CrAsにおいて最も大きく、隣接Cr原子間に強い強磁性的相互作用がはたらいていることが期待される。実際、分子線エピタキシーを用いてGaAs基板上に成長させた閃亜鉛鉱型CrAs薄膜が、室温で強磁性を示すことが実験的に確認された。電子状態の第一原理計算によると、閃亜鉛鉱型CrAsは、フェルミ準位で完全にスピン分極したハーフ・メタリック強磁性体であり、この物質を用いた超格子構造において、巨大なトンネル磁気抵抗効果をはじめとする顕著なスピン関連現象が実現する可能性がある。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] H.Akinaga: "Material Design of Half-Metallic Zinc-Blende CrAs and the Synthesis by Molecular-Beam Epitaxy"Japanese Journal of Applied Physics. 39・11B. L1118-L1120 (2000)
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[Publications] 白井正文: "スピン機能材料の電子状態"応用物理. 70・3. 275-278 (2001)