Research Abstract |
都市域の合流式下水道では,雨天時,しばしば,下水処理場の処理能力を上回る多量の汚濁雨水が流出し,処理されないまま,下流域の河川,湖沼へと排水されている.また,分流式下水道においても,雨水は直ちに下流域へと排水されるため,特に,降雨初期には,高濃度の汚濁雨水が処理されないまま,河川,湖沼へと流出している.こうした汚濁雨水の未処理排水(越流水)は,都市域を抱える河川,湖沼,内湾などの公共用水域において近年顕在化している水質悪化の原因の一つと考えられ,この排水問題の早期解決(越流水対策の早期確立)が切望されているところである. 本研究では,現在,供用されている下水道管渠網の各下水管渠内には,特に中小の降雨時,広い余裕空間が存在していることに着目し,下水道管渠網内の幾つかの地点にゲートを設置して降雨時それらを閉操作し,管渠網内に広く汚濁雨水を貯留するとともに,降雨中および降雨終了後,この貯留された汚濁雨水の中から,処理能力に見合うだけの汚濁雨水を下水処理場に送り続け,数日以内には,これら汚濁雨水を全て処理して放流することにより,中小出水時の越流現象をできるだけ発生させない越流水対策について検討を進めた. その結果,河道位数が6次と4次の下水道管渠の下流端にゲートを設置し,中小出水時,これらゲートを閉操作して,6次,5次の下水道管渠および4次,3次の下水道管渠に流出雨水を貯留する対策については,10mmを下回る降雨による全ての流出雨水を貯留し,処理して放流することが可能であることが明らかとなった.また,これにより,年間の流出汚濁の30〜40%を通常の処理を施して放流できることになると予測される.
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