Research Abstract |
本年度は,平成12年度に行った実験結果に対して更なる考察を加え,鉄筋コンクリート(RC)柱の軸力保持能力喪失について検討した。平成12年度に,兵庫県南部地震において中間層崩壊した建物の柱を対象として,比較的低軸力を受けるせん断破壊型RC柱が軸力保持能力を喪失するまでの実験を行った結果,1)軸力比0.27程度までの軸力であれば,せん断力がゼロ近くになるまで安定して軸力を保持することができる。2)軸力比が大きいほど,軸力保持能力喪失時変形が小さい,等の知見が得られた。 本年度は,まず,載荷開始から軸力保持能力喪失時までにおける,水平力による吸収エネルギー(E_L),鉛直力による吸収エネルギー(E_v)およびそれらの和(E_L+E_v)について考察した。次に,軸力保持能力喪失を評価する指標として変形増分比(水平変形増分に対する鉛直変形増分の比)を定義し,実験により得られた鉛直変形,水平変形によって変形増分比を算出し,検討した。次に,実験により得られた変形増分比の性状を塑性流れ則に基づいて説明することを試みた。その際,破壊曲面を荷重平面上に想定し,縦軸が軸力,横軸がせん断力によって構成された楕円で表せると仮定した。初期破壊曲面は実験結果の最大せん断力に対応し,軸圧縮耐力点および軸引張耐力点を通ることとし,破壊の進行に伴い,軸引張耐力点を表す最下部は不動のまま,破壊曲面が全体的に縮小すると考えた。一方,塑性流れ則によると,変形増分は,破壊曲面の法線方向となる。得られた結果は以下のとおりである。1)単調載荷,繰り返し載荷ごとに比較した場合,軸力比が大きいほど,吸収エネルギーE_L,E_vおよびE_L+E_vが小さい。2)変形増分比は破壊の進行に伴い増加し,同一軸力下において,軸力保持能力喪失時の変形増分比は載荷履歴によらず一定の値となる。この,変形増分比が増加していくという現象は,楕円で仮定した破壊曲面の縮小という概念を用いておおむね説明できる。
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