2002 Fiscal Year Annual Research Report
五島キリシタン集落の空間特性とその形成過程に関する研究
Project/Area Number |
12650620
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
菊地 成朋 九州大学, 大学院・人間環境学研究院, 教授 (60195203)
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Keywords | 集落 / キリシタン / 五島 / 形成過程 / 分家 |
Research Abstract |
本年度は,まずこれまでに行なったカクレキリシタン集落「月の浦」とカトリック集落「大水」の調査結果を比較検討し,両者の相違点と共通点について考察した。カクレキリシタン集落は斜面に形成された段々畑の中に家々が散在する村落景観を有するのに対し,カトリック集落ではその焦点に教会を配した統合的な景観がみられ,空間構成は一見大きく異なっているかにみえる。しかしながら,これらを領域モデルで比較すると,その構成は基本的に類似しており,さらに形成過程の分析によって両者は同じ原理で展開してきたことがわかった。五島キリシタン集落の独特の村落景観は,キリスト教徒という属性に直接起因するのではなく,居着きゆえの立地特性をベースに,分割相続型のイエワカレ慣行とその具体的分与システムによって形づくられたとみることができる。 また,これら五島キリシタン集落の直面する今日的状況を示す事例として,過疎化による集落移転を行なった「折島」集落を対象に,住環境変容についての調査を行なった。そこでは,自助的に形成された従来の集落から,行政により計画された現代的な団地へと住環境が激変し,同時に住民組織も島民による完結的なコミュニティから,青方の町の住民としての位置付けに変わった。教会組織も以前の折島教会は消滅し,人々は青方教会の中に組み込まれることになった。このように,地域組織は解体を余儀なくされる一方で,現在の住環境には以前の折島から継承された要素がいくつか見い出された。画地割型の団地を従来の隠居制やイエワカレにもとづいて再構成していること,領域内に耕地を形成して生活補助的な農業を持続していること等である。 さらに,本年度は最終年度であることから,これまでの調査結果を整理し,これに本研究の中心課題についての全体的考察を加え,報告書を作成した。
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