2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12650657
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
竹田 真帆人 横浜国立大学, 工学部, 助教授 (30188198)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 孝雄 横浜国立大学, 工学部, 教授 (40018007)
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Keywords | ナノ磁性粒子 / 銅-コバルト合金 / 析出過程 |
Research Abstract |
本研究では、初年度(12年度)の研究課題として、(1)コバルト粒子形態と磁化率変化の対応、(2)整合コバルト粒子対間の原子層測定、(3)磁場中焼鈍実験、を計画した。課題(1)については、熱処理によってコバルト微粒子の析出形態を、A.ランダムな分布をする整合粒子状態、B.双対化した整合粒子状態、C.非整合粒子状態の3段階に調整し、これらの試料の磁気特性をSQUIDにより調べた。その結果、Aランダムな分布をする整合粒子状態については常磁性的磁化曲線、C.非整合粒子状態についてはやや強磁性に近い傾向を示す磁化曲線が得られた。これらの中間状態であるB.双対化した整合粒子状態では低い外部磁場から高い磁場に磁化率のやや急激な変化を示す曲線が得られた。特にこの状態についてはコバルト粒子間の磁気的相互作用が関係している可能性に着目しているが、微小な粒子間に反平行なスピン対が形成されること、析出粒子にサイズ分布があると仮定してモデル計算を行なったところ磁化率曲線に見られる特徴が定性的に再現される事が明らかとなった。(2)の課題は双対化したコバルト粒子間の相互作用がどのようなものであるか考える際に重要であるが、コバルト粒子中心間距離と粒子間銅原子層厚さの相関を計測したところ、ナノコバルト粒子のサイズが大きくなる程、銅原子層の厚さも大きくなるという相関関係のある事が明らかになった。この点から考えるとコバルト粒子間に作用する相互作用はコバルト粒子に対する体積依存性を持つと考えられる。(3)の課題に関しては、過飽和状態にあるCu-Co合金試料を磁場印加の条件下で焼鈍処理を施し、その析出形態を透過型電子顕微鏡で観察する実験を実施した。その結果、磁場印加状態で析出を進行させると無磁場状態での析出よりもコバルト粒子の成長が促進される事、このために整合-非整合遷移の示す時間が早まる事が明らかになった。本研究では、これらの現象がどのような物理的相互作用を背景としているかを知るために、モンテカルロ法計算を行なった。Cu-Co合金におけるコバルト粒子の析出形態に関しては、スピンを考慮すること、モンテカルロ法計算の中に一種の臨界粒子サイズの概念を取り入れることにより、定性的にその特徴の多くを説明できることが明らかになった。また(3)で得られた実験結果についても、イジングスピン模型においてスピン分布に偏りを持たせて計算することにより、計算結果として現象の定性的な再現が可能であることを明らかにした。以上の研究結果は、ナノ磁性粒子に関して発表された従来の研究では得られていないものなので、現在、論文投稿を準備している。
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