2000 Fiscal Year Annual Research Report
異種元素添加による窒素イオン注入ガラス状炭素の化学結合制御と表面改質
Project/Area Number |
12650708
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
高広 克己 京都工芸繊維大学, 工芸学部, 助教授 (80236348)
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Keywords | ガラス状炭素 / イオン注入 / 表面荒れ / 異種元素添加 / 非晶質水素化炭素 / ラマン分光 / 耐摩耗性 |
Research Abstract |
本研究は,異種元素(HおよびSi)を添加したガラス状炭素(GC)において,窒素(N)イオン注入表面層の化学結合,構造,表面形態,硬度および耐摩耗性を系統的に調べ,異種元素添加効果を明らかにし,さらに,Nイオン注入によって効果的に表面改質を行うための最適条件を見出すことを目的とするものである.本年度は,水素(H)を添加したGCについてNイオン注入を行った結果,顕著な水素原子添加効果を見出すことができたので,その機構を解明することに重点を置いた. これまでNイオン注入によってGC表面が激しく荒れることが知られていたが,本研究では,水素原子を添加することによりそのような表面荒れは生じないことを見出した.表面荒れ抑制の機構を解明するために,種々の条件で水素原子を添加したGCに対してNイオン注入を施し,表面観察および化学結合状態分析を行った.水素添加はDイオン注入および重水の電気分解によるDチャージの2つの方法で行った.さらに,Dイオン注入は1keVおよび5keVのエネルギー条件で行った.その結果,5keV Dイオン注入を用いて,GC表面から100nmまでの深さにほぼ一様に水素添加をした場合に限って表面荒れが抑制されることが分かった.また,D原子を10at.%以上添加した場合,Nイオン注入に伴い予め添加したD原子が脱離する一方,真空チャンバー内からH原子が吸蔵され,Nイオン注入層の(D+H)濃度は常に10at.%以上に保たれることが分かった.ラマン分光法によってDイオン注入GCの状態分析を行った結果,非晶質水素化炭素(a-C:H)が生成されることを見出した.以上のことから,イオン注入による水素添加でGC表面層をa-C:Hにすることで,Nイオン注入による表面荒れを抑制できることが明らかになった.今後は水素添加して表面荒れを抑えたGCにNイオンを注入し,硬度と耐磨耗性を調べる予定である.
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