Research Abstract |
特異な環系を有する2H,6H-テトラヒドロ1,5,3,7-ジセレジアゾシンは酸化剤と反応し、セレン原子間で二環性ジカチオン中間体を形成後、求核種の作用により、3H-ジヒドロ-1,2,4-ジセレナゾリジンに容易に変換することを明かにしている。本研究では、同様にテルル体ならびに硫黄体に対する酸化剤の作用を検討したところ、テルル体ではセレン体と同様の反応を起こすことが明かとなったが、硫黄体では異なる結果を得た。 セレン体と同様の方法で合成した3,7-ジフェニル-2H,6H-テトラヒドロ-1,5,3,7-ジテルラジアゾシンはジクロロメタン中室温で3時間かき混ぜたところ、空気酸化により62%の収率で4-フェニル-1,2,4-ジテルラゾリジンを与えた。また、3,7-ビス(p-フルオロフェニル)2H,6H-テトラヒドロ-1,5,3,7-ジテルラジアゾシンも同様の条件で検討したところ、64%の収率で相当する1,2,4-ジテルラゾリジンが得られた。この化合物は比較的安定で、X-結晶構造解析により最終的に構造を確認した。p-アニス、p-トリル、p-クロロフェニル体も-78℃で、NBSとの反応により相当する1,2,4-ジテルラゾリジンが得られた。 一方、2H,6H-テトラヒドロ-1,5,3,7-ジチアジアゾシンとBr_2/SやS_2Cl_2との反応では、生成物は1,2,4-ジチアゾリジンではなく、6H-ジヒドロ-1,2,3,4,5,7-ペンタチアゾシンであった。2H,6H-テトラヒドロ-1,5,3,7-ジセレナジアゾシンおよびジテルラジアゾシンは酸化剤の作用によりカルコゲン原子間での渡環相互作用によるジカチオンを形成後、求核試薬の攻撃により、1,2,4-ジカルコゲナゾリジンを生成するのに反し、硫黄体は引き続き不安定な1,2,4-ジチアゾリジンに対し、単体硫黄が作用し、1,2,3,4,5,7-ペンタチアゾシンが生成するものと考えられる。
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